運動ガイド40 身体活動による疾患等の発症予防・改善のメカニズム3

厚生労働省は「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を公表しました。その中の「身体活動による疾患等の発症予防・改善のメカニズム」の「身体活動による発症予防・改善のメカニズム」の続きを紹介します。

〔身体活動による発症予防・改善のメカニズム〕
2)心血管疾患
心臓、血管、自律神経系などの機能不全が疾患の主な要因です。

特に有酸素性身体活動により、左心室内腔拡大や骨格筋毛細血管密度増加といった形態的適応に加え、自律神経活動や動脈スティフネスの改善、心拍数や末梢血管抵抗の低下といった機能的適応が誘発され、全身の血圧が正常に維持され、高血圧が予防・改善されます。

加えて、動脈内皮機能の改善や粥腫(プラーク)形成の抑制、凝固・線溶系の改善による血栓形成の抑制が生じ、動脈の梗塞によって誘発される冠動脈性心疾患や脳卒中などの発症リスクが低下します。

3)運動器障害
骨、筋肉、関節などの変形や萎縮・炎症が疾患の主な要因です。

身体活動は骨格筋での抗炎症作用があるマイオカインの産生や免疫細胞の活性化を通して、慢性炎症を抑制し、腰痛や関節痛を予防・改善します。

また、身体活動に伴う骨や筋肉への物理的な刺激は、骨芽細胞と破骨細胞の活性を調節し、骨の形成と吸収のバランスを変え、筋肉でのタンパク質同化や神経筋系の働きを促進することで、骨粗鬆症やサルコペニアの予防・改善に寄与します。

特に筋力トレーニングのような筋や骨に、大きな力がかかる無酸素性活動が有効ですが、体力レベルの低い高齢者等では有酸素性身体活動でも運動器障害の予防効果が認められています。

4)精神・神経疾患
海馬の容積の減少や、脳由来神経成長因子・神経伝達物質の血中濃度の低下が伴います。身体活動により、神経成長因子や伝達物質の血中濃度の増加や、うつ病や軽度認知症の患者での海馬の萎縮の抑制が報告されています。

5)一部のがん(大腸がん、子宮体がん、乳がんなど)
共通する病因はDNAなどの遺伝物質の変化(突然変異)による正常細胞の腫瘍化です。身体活動ががんを予防・改善するメカニズムはほとんど明らかになっていませんが、免疫機能の改善を含むいくつかのメカニズムを介して腫瘍の成長を低下させる可能性が推察されています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕