食事と運動の組み合わせというと、体脂肪の増減という目線で食事量と運動量のバランスが考えられてきました。食事量が多くて運動量が少なければ太っていく、食事量が少なくて運動量が多ければやせていくという単純なシーソーバランスだけで説明されてきたところがあります。
ところが、食事量と運動量が同じであっても、食事と運動のタイミングが変わることで、より太りやすくなることもあれば、逆にやせやすくなるということがわかり、タイミングを変えるだけでエネルギー代謝が変化することが明らかになってきました。
この研究を始めるきっかけとなったのは“ダンベルダイエット”で、日本臨床栄養協会の学術集会の講演でダンベルダイエットの元祖の鈴木正成先生(当時は筑波大学教授)の話を聞きました。
聴衆としての参加ではなく、当時は日本臨床栄養協会の季刊誌「New Diet Therapy」の編集を手掛けていて、講演内容を記事にするためにテープ起こしをして、それを講演録として掲載していました。
文章化するだけでなく、原稿を講演者に見てもらい、修正を加えていくという作業で、そのときにはダンベルを使った運動によって筋肉をつけることでエネルギー代謝を高めるという認識でした。
訪問して話をうかがっていくうちに、食事と運動のタイミングによって、同じ食事量、同じ運動量であっても消費エネルギー量が異なるという研究成果があることがわかり、これについて自分でも研究を進めていくきっかけとなりました。
そして、臨床栄養の立場から運動とのタイミング(食事の後に運動をするか、運動の後に食事をするか)について考えをまとめていきました。
その結果を鈴木先生に伝える機会は案外と早く訪れました。それはレスリング女子の国際チームの体重コントロールの研究で、日本レスリング協会から難しいオーダーがあり、その検討会に私も呼ばれました(といっても臨床栄養の専門家の代理という立場でしたが)。
そのオーダーは、同じ体重、同じ体脂肪率の女子選手に対して、同じ食事量、同じ運動量で一方は体脂肪を減らす、一方は筋肉量を減らさずに体脂肪を増やすというものです。
鈴木先生のタイミングダイエット理論では、空腹時に運動をしてから食事をすると血糖値が上がりにくくて、肝臓での脂肪合成が抑えられるということでした。
また、食後に筋肉運動をすることによって血糖値の上昇を抑えて、やはり脂肪合成を抑えるということで、食事をしてすぐに激しい筋肉運動をするという、一般にはすすめにくい方法でした。
自律神経の交感神経と副交感神経の切り替えが重要で、そのために運動をさせていましたが、切り替えるだけなら入浴でもよいのではないかという私の考えを実証してもらえるきっかけでもありました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕