肉まんは中華饅頭の具として肉が入ってるものですが、「肉まんなのに豚肉じゃないか」と話している人がいました。これは関西出身の人なら、あるあるの反応で、関西では“肉”といえば牛肉を指します。だから、豚肉を使ったものは、わざわざ「豚まん」と言わないと、牛肉じゃないのかとツッコミをされます。豚まんで有名な551蓬莱のサイトを見ると「豚まん(肉まん)」と書かれています。かつては551蓬莱では牛肉入りの肉まんが販売されていたことがあり、肉=牛肉の文化を示しています。
関西では肉うどんは牛肉が乗っています。全国的に牛丼と呼ばれている煮た牛肉が乗っているのは関西風に言えば「肉丼」ということになるのでしょうが、関東では肉丼というと豚肉がメインで、たまに鶏肉も見かけます。
こんな今さらの話を、なぜ取り上げるのかというと、日本人の体質の話をしているときに、牛肉は豚肉よりも血液がドロドロになりやすく、健康のために減らしたほうがよいと言われても、関西人には無理じゃないかとい話題が出たからです。
関西から関東に進出してきた牛カツは「肉カツ」とは名乗っていませんが、肉のカツといえばとんかつ(トンカツ)があまりに全国的に有名で、「肉カツ」だととんかつ(豚かつ)と勘違いされるので、これは当たり前かと思われます。
豚肉と牛肉の大きな違いは、脂肪酸の割合です。動物の肉には飽和脂肪酸が多く含まれ、血液中で固まりやすいことから多くとると血液をドロドロにするとされます。この飽和脂肪酸が牛肉には多く、豚肉は牛肉に比べると少なくなっています。少ない分だけ多めになっているのは不飽和脂肪酸で、不飽和脂肪酸が多いほど肉質が柔らかくなります。牛肉より豚肉のほうが柔らかいのは食物繊維の量ではなく、脂肪酸の種類が関係していたわけです。不飽和脂肪酸は魚の油や植物油に多く含まれているもので、いわゆるサラサラ系の油です。
同じ肉を食べているのでも、牛肉を多く食べていると飽和脂肪酸の摂取量が増えるわけですが、この話に対して大阪のテレビ局のディレクターから、「そんな脂肪酸が多い上等な牛肉は食べていないから大丈夫」との発言がありました。松坂牛、神戸牛、備前牛などのサシの入った高級な牛肉を食べていないから脂肪摂取は少ないと言っているのでしょうが、これは見える脂肪なので意識して食べ過ぎないようにすることはできても、煮たり焼いたりした肉の脂肪は目立たなくなり、後から加えた脂肪はまったく見えない脂肪となります。
脂肪はおいしくて多く食べがちで、エネルギー量も1g当たり約9kcalと糖質、たんぱく質の約4kcalと比べると2倍以上となっています。飽和脂肪酸のほうが特においしく感じるので“調味料”のように加えられている料理も少なくありません。自分で食材を買って料理をするなら脂肪の割合も量も確認して使えるものの、調理済みのものは、それがわかりません。植物性の油であってもパームヤシから採れるヤシ油は飽和脂肪酸が多い特徴的な植物油で、これが加工品の揚げ油や炒め油に多く使われています。安くて、おいしく作れるからですが、加熱によってトランス脂肪酸が多く発生します。トランス脂肪酸は動脈硬化の要因となるだけに、動物の脂肪でなければ大丈夫、植物の油なら安心だとは言えないわけです。