毛髪の科学5 髪の毛の色の違いの理由

1本の毛髪に注目すると、毛髪は3層の構造になっています。外側はキューティクル(毛小皮)、中間部はコルテックス(皮質)、中心部はメデュラ(髄質)と呼ばれています。この構造は、巻き寿司の海苔、ご飯、具にたとえられます。

キューティクルは薄い外膜で、うろこ状のタンパク質で、5〜10枚が重なって毛髪の内側を守る保護膜の役割をしています。キューティクルは中のコルテックスが崩れないようにするもので、キューティクルとキューティクルの間には18−メチルエイコサン酸(MEA)という脂質成分があって、キューティクルが剥がれにくくしています。

そのおかげで毛髪のツヤが保たれているのですが、紫外線を浴びたり、ブリーチ(毛染め)によって失われやすくなっています。

毛髪の90%ほどを占める中間部のコルテックスは繊維状の束がまとまった構造をしていて、タンパク質と脂質がバランスよく含まれ、水分の豊富に含まれています。

毛髪の付け根にあたる毛母細胞から十分な栄養が送られていれば、太くて柔軟性のある毛髪となります。毛髪の色を左右するメラニン色素はコルテックスに含まれています。

中心部のメデュラは芯の役割をしていて、網目状もしくは多孔質のタンパク質で、全体の2〜3%となっています。メデュラの役割は、長い毛髪研究でも実はよくわかっていなくて、中に空気が含まれることから保温の役割をしているといわれています。

日本人の髪の色は“黒髪”と呼ばれるように、若い時期には黒々としていますが、年齢を重ねるにつれてコルテックスの中にあるメラニン色素が抜けてきます。メラニン色素には黒褐色系のユーメラニンと黄赤色系のフェオメラニンがあります。

ユーメラニンが多いと黒髪になり、少なくなるとブロンドになり、ユーメラニンがほとんど含まれなくなると白髪となります。ブロンドというと金髪を思い浮かべるかもしれませんが、日本人の場合には明るい茶色となります。

メラニン色素は毛母細胞と隣り合った毛球部のメラノサイトで作られます。毛母細胞が細胞分裂をするときに、メラニン色素が移動して毛髪の中に取り込まれています。

メラノサイトは色素形成細胞とも呼ばれていますが、年齢を重ねるとメラノサイトの数が減ってくるのと同時に、メラノサイトがメラニン色素を作り出す能力が低下してきます。この変化が白髪を増やしていくことになり、個人差はあるものの40代後半から60歳では20歳の半分ほどのメラニン色素しか作られなくなるとされています。

個人差だけでなく、遺伝やストレス、シャンプーの影響なども指摘されています。また、メラニン色素の材料となるチロシンの不足も考えられています。

チロシンはタンパク質を合成する作用があるアミノ酸で、チーズや納豆、味噌、肉や魚に多く含まれています。チロシンはチロシナーゼという酵素の働きによって合成されます。チロシナーゼは銅イオンを含む酸化酵素であることから、銅が含まれる魚介類、レバー、ナッツ、大豆、ココアなどを食べるのが良いとされています。

毛髪を黒くするには黒い色の海藻を食べるのがよいと一般に思われているようですが、チロシンとメラニン色素の関係を考えると、海藻は効果がないようです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕