毛髪の状態に影響することとしては、男性ホルモンの分泌や頭皮の血流などがよく言われることですが、毎日の生活習慣も大きな影響を与えるとして、食生活や運動、休養が取り上げられています。
毛髪のために特別なことをするのかというと、メディアやネットなどで紹介されているのは「こんなことでいいのか」という声があがりそうなことばかりです。大雑把にいうなら“バランスの取れた栄養”“適度な運動”“充分な休養”ということになります。
しかし、それらの目標には納得できるところもあって、毛髪のためには絶対に必要な栄養成分があります。摂取した栄養成分からエネルギーを作り出して毛髪の新陳代謝を高めるためには、欠かすことができないビタミンとミネラルがあります。
毛髪に必要な成分の基本はたんぱく質です。毛髪というとカルシウムが必要と書かれた書籍やネット情報もあるのですが、カルシウムは毛髪の成分の一部ではあっても、中心成分ではありません。カルシウムが中心的な成分となっているのは骨です。
毛髪の成分は、タンパク質が約80%を占めていて、そのタンパク質の中でもケラチンタンパク質が約70%、非ケラチンタンパク質が約10%を占めています。ケラチンは爪や皮膚の角質などと同じ硬質タンパク質の一種で、動物では角や羽の主成分ともなっています。
タンパク質以外では、水分が約12%、CMCが約3.5%、メラニン色素やNMF(天然保湿因子)などが約4.5%となっています。CMCは細胞膜複合体といってキューティクルの薄い膜状の結合成分となっています。
栄養成分のうち糖質(ブドウ糖)、脂質(脂肪酸)、たんぱく質(アミノ酸)は三大エネルギー源と呼ばれています。三大エネルギー源は、全身の細胞の中にあるミトコンドリアという小器官に取り入れられて、エネルギー代謝が行われます。
エネルギー代謝というのは糖質や脂質を酸化分解してエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)を作り出すことです。このエネルギー物質を使って、細胞は新陳代謝を行っているので、多くのエネルギーを作り出すには糖質と脂質を不足させることはできません。
理想的なバランスは、厚生労働省の『日本人の食事摂取基準』では、糖質が50〜65%、脂質が20〜30%、たんぱく質が13〜20%とされています。極端な糖質制限や肥満の改善のために脂肪をあまりに制限するのは体のためにも毛髪のためにもよくないということです。
エネルギー代謝にはビタミンB群のビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂が必要です。ビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆は植物性食品にも含まれているので大豆、玄米から摂ることもできますが、ビタミンB₁₂は動物性食品にだけ含まれるために肉や魚も食べる必要があります。
毛髪の成長には、さまざまな酵素が働いていますが、酵素が働くときに必要な補酵素の多くはミネラルです。その中でもマグネシウムは約300種類、亜鉛は約200種類の酵素に対する補酵素となっています。マグネシウムは種実類、豆類、魚介類などに多く、亜鉛は魚介類、肉類に多く含まれています。
“適度な運動”と言われても、どの程度の運動を、どれくらいの時間やればよいのかわからないという人が多いかと思います。血流を促進して、毛髪の育成に役立てるためには、ウォーキング程度の運動でも充分です。
普通に歩くだけでも安静時の3倍ほどの消費エネルギー量があります。ウォーキングは有酸素運動で、多くの酸素を取り込んで体を動かすとエネルギー代謝も高まります。
糖質と脂質を使ったミトコンドリアの中のエネルギー代謝には酸素が必要で、酸素を多く取り入れることで、多くのエネルギーを作り出して、その結果として毛髪の育成を促進させることができます。
“充分な休養”というのは、休み時間を取ることというよりも、充分な睡眠時間を取り、熟睡することを指しています。毛髪も含めて身体の成長には、成長ホルモンが必要です。成長ホルモンが最も分泌されるのは深夜の0時から2時の間です。その時間帯に熟睡していることによって成長ホルモンの分泌が高まるので、少なくとも0時前には就寝することがすすめられます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕