ダイエットについて代謝の話をするときに、「脂肪が燃える」という表現がされます。これはテレビCMでも普通に使われているフレーズで、脂肪が燃えて減っていくというのはイメージしやすいことではあるものの、体内で脂肪が燃えるということは実際にはありません。
以前にCMで「燃焼系」というフレーズが多発されたことがあり、飲料やサプリメントでは今でも当たり前のフレーズとして使われています。燃焼系のアミノ酸飲料を販売しているメーカーに、何が燃えているのかを問い合わせたことがあります。
大手メーカーだけに脂肪が燃えているわけではないことは充分に承知していて、脂肪が燃焼するという表現をすると法律に違反することもわかっています。それだけに返ってきた答えは、「これを飲んで燃えるように活動してほしい」という意味合いとのことでした。
脂肪が体内で燃焼するとしたら相当の高温が必要で、油の発火点は340℃以上です。ところが、人間の体温は42℃までしか上昇しません。
そのために体温計の目盛りは42℃までです。デジタル式の体温計は通常の表示では限界温度がわかりにくいのですが、アナログ式の体温計(水銀体温計)は42℃が最高温度です。
人間の身体を構成する細胞のたんぱく質は、42℃を超えると変性が起こって、本来の働きができなくなります。つまり、42℃を超えると生命維持ができなくなるので、目盛りをつける意味がないということです。
脂肪が燃えていないとすると、どんな仕組みで脂肪がエネルギーとして使われているかというと、脂肪を構成する脂肪酸は細胞のミトコンドリアに取り込まれてから、高エネルギー化合物のアセチルCoAに変化して、これがエネルギー産生器官のTCA回路でエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)となります。
ATPからリン酸が1つ外れてADP(アデノシン二リン酸)になるときにエネルギーが発生します。こういった仕組みで脂肪がエネルギー化されるわけで、脂肪に火をつけたら燃えてなくなるというような簡単な仕組みではないのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕