厚生労働省は「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を公表しました。その中の「全身持久力(最高酸素摂取量)について」の「基準値の改訂」「全身持久力の評価法」「全身持久力を維持・向上させる方法」を紹介します。
〔基準値の改訂〕
「健康づくりのための身体活動基準2013」で示された全身持久力の基準値は、日本人男性の20歳代で推定平均値より1〜1.5メッツ低く、約90%の20歳代男性が旧基準値を達成していました。
一方、50歳代以上では男女とも旧基準値が推定平均値より1〜1.5メッツ高く、この世代で旧基準値を達成できる者は5〜25%に過ぎませんでした。基準値が国民の実情と乖離している場合、「余裕で基準値を超えている」「基準を達成することはとてもできない」といった誤った認識を、健康づくりに取り組む多くの個人や集団に対して生じさせる可能性が懸念されます。
このことから、これまでの疫学研究のエビデンスと今回示された推定標準値に基づき、新たな全身持久力の基準値を性・年代別に示すこととしています。
〔全身持久力の評価法〕
全身持久力は自転車エルゴメーターやトレッドミルを用いた漸増強度運動負荷試験中の呼気ガス分析によって観察される酸素摂取量の最高値です。全身持久力を実測するためには、高価な運動負荷装置や呼気ガス分析装置とそれを駆使する高い技術が必要であり、個人が気軽に全身持久力を実測することは困難である。
代替法として疲労困憊に至らない2〜3段階の運動負荷試験中の強度と脈拍数の関係から全身持久力を推定する方法がフィットネスクラブなどで用いられています。また、スポーツ庁の体力・運動能力調査で用いられている20mシャトルランや6分間歩行といったフィールドテストの結果から推定することも可能です。
特定健康審査における標準的な問診票において全身持久力の簡便な評価として歩く速度を調査しています。近年では、ウエアラブルデバイスによるGPSで測定した移動距離と移動中の脈拍数との関係から全身持久力を推定する方法も普及しつつあります。
〔全身持久力を維持・向上させる方法〕
全身持久力は、肺で大気から取り込んだ酸素を、心臓から血液に乗せて運搬し、活動筋で糖や脂肪を分解することで身体活動の遂行に必要なエネルギーを酸性する能力です。全身持久力の向上には、歩行、ランニング、水泳などの有酸素性身体活動の習慣的実施が有効です。
中高強度で、1回30分間、週当たり3回以上の継続実施が推奨されています。安全と効果のバランスから、強度は全身持久力の50〜75%程度、主観的には「ややきつい」と感じる程度が適切です。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕