毛髪の科学14 毛髪を守るための“お湯シャン”

シャンプーをしないと毛髪の毛穴に皮脂が詰まって、これが発毛を妨げる原因にもなります。毛穴の皮脂を押し出すようにマッサージしながらシャンプーをしている人もいますが、これには時間がかかることから、かえってシャンプー液で毛髪がダメージを受けることを心配する人も少なからず存在しています。

毎日、シャンプーをする必要はないからと、入浴は毎日であっても毛髪を洗うのは1日おきという人もいます。しかし、皮脂の分泌が多い人の場合には頭皮も毛髪もベタついて、毛髪のベタつきが髪を薄く見せてしまうことに抵抗感を感じる人も少なくありません。

そこですすめられているのが、お湯だけで洗髪をする“お湯シャン”です。もっと短く“湯シャン”と呼んでいる人もいるようです。

シャンプーをすると、毛髪の汚れが除去されるのはよいとして、皮脂も取りすぎてしまうことがあります。皮脂は頭皮をコーティングして、これがバリアの役割もしていますが、シャンプーで洗いすぎると皮脂が多く取れて、角質が剥がれることにもなります。

角質は皮膚の表面の部分で、細胞としては死んでいるので、時間をかけて剥がれていきます。徐々に剥がれているうちは、その下の水分が減るようなことはないのですが、短い時間に多くが剥がれるようなことがあると水分が抜けるだけでなく、角質層の下の顆粒層が外からの刺激を受けやすくなり、皮膚が荒れたり、炎症を起こすようなことにもなります。

かかとの角質が硬く、厚くなったときには軽く除去するのはよいとしても、除去しすぎるとヒリヒリしたり、痛みを感じることにもなります。角質層が剥がれたときには、そこまでの変化はないとしても、皮膚には着実にダメージを与えています。

シャンプーのしすぎは頭皮を乾燥させすぎることになり、毛穴にもダメージを与えることになります。1日に1回のシャワーなら問題がないように思われても、頭皮の老化が進んできている状態では、刺激を受けやすくなっています。頭皮が弱い人の場合には皮膚炎を起こすことにもなります。そこで2回に1回は、お湯だけで洗髪をしようというわけです。

お湯だけで洗髪するときには、その温度がまずは大切になります。体をシャワーを使って洗うときの適度な温度というと、40〜42℃が一般的です。寒い季節には42℃以上の温度でないと体が温まらないということもあります。その温度のままで、お湯シャンをすると、これは熱すぎることになります。

お湯の温度は自律神経の調整に影響を与えます。リラックス系の副交感神経の働きが盛んになるのは38〜40℃での入浴をしたときです。副交感神経が働くと、血管はゆるみ、血流もよくなります。

ぬるめのお湯につかっていると、体が芯から温まってきて、心拍数が減ってきて、血圧も下がった状態になっています。ぬるめのお湯で洗髪することでも、同じように頭皮もリラックス状態にさせることができるということです。

お湯の温度が40℃を超えると徐々に副交感神経の働きが低下してきて、逆に交感神経の働きが高まっていきます。そして、42℃を越えると交感神経の働きが盛んになります。交感神経が働いているときには、血管が萎縮して、血圧が上昇して、心拍数も吸収数も高まります。

いわゆる興奮状態になって、入浴することで体脂肪の燃焼が進むというダイエット効果はあるのですが、この温度でシャワーを浴びたときには頭皮にとっては血流が低下してマイナスになります。

シャワーの温度を切り替えられない場合には、適度な温度に調整したバスタブのお湯を汲んで洗う方法でも大丈夫です。シャンプーを使っていないので、それほどしっかりと洗い流す必要はないからです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕