白髪になるのは精神的なストレスが大きいと言われています。実際にどうなのかということについては、それぞれの専門家が専門分野の知識を披露して説明してきましたが、新たに科学的な研究成果が発表されています。
ストレスに大きく関係しているのは自律神経の働きで興奮系の交感神経の働きが盛んになりすぎると血管が収縮して血流が低下して、多くの血液を送り込もうとして心拍数が増加します。また、血圧が上昇しますが、それでも血液が運んでくる酸素が不足するような状態になると呼吸数が増えます。
これはわかりやすい変化ですが、気づきにくいところでも変化が起こっています。ストレスが高まって交感神経の働きが盛んになると、毛穴が収縮します。毛穴の収縮が激しくなったときに起こるのが鳥肌です。
寒いときや恐れを感じたときに毛穴が収縮するのは、交感神経が枝分かれして、一つひとつの毛包とつながっているからです。毛包は毛穴の奥の毛根を包んでいる袋状の組織で、交感神経が働くと毛包が収縮して、毛穴から生えている毛が立ち上がるようになります。これは皮膚の毛穴でも頭皮でも同じように起こります。これが、鳥肌が立った状態です。
毛包には2種類の幹細胞があります。一つは毛髪を作る毛包幹細胞で、もう一つは毛髪に色をつける色素幹細胞です。毛包幹細胞が刺激されたときには毛が育つようになり、色素幹細胞が刺激されたときには、色素幹細胞の一部がメラニン細胞となり、ここからメラニン色素が作られて、毛髪を着色していくわけです。
ストレスが強まって、血流が低下すると毛包幹細胞の働きが悪くなって成長しにくくなることから、こちらは薄毛のほうに影響してきます。色素幹細胞のほうはストレスによって多く分泌されたノルアドレナリンによって働きが抑えられます。
ノルアドレナリンは交感神経の情報伝達物質で、興奮ホルモンとも呼ばれていますが、色素幹細胞は働きが抑えられるだけではなくて、激しいストレスを受け続けると色素幹細胞そのものを傷つけることにもなります。完全に傷つけられると色素幹細胞が枯渇した状態になって、その後は黒い色素が作られなくなります。
もう少し詳しい仕組みを説明すると、色素幹細胞は少しずつメラニン細胞を作り出していますが、ノルアドレナリンによって色素幹細胞が強い刺激を受けると本来の働きが障害を受けて、すべての色素幹細胞がメラニン細胞に変化します。
そして、メラニン細胞は一定量のメラニン色素を作り出すと活動を停止します。こうなると次からはメラニン色素が作り出せなくなるので、白髪になるということです。
年齢を重ねると色素幹細胞がメラニン細胞を作る能力が低下して白髪が多くなっていくわけですが、強いストレスによって色素幹細胞が枯渇すると、もうメラニン色素が作られなくなって、白髪しか生えない状態になってしまうというわけです。
ストレスが強い状態が長く続くと白髪になることがわかったところで、ではストレスが解消されたら白髪がなくなるのか、つまり黒髪に戻ることができるのかということが気になります。
このことを期待したいところですが、強いストレスによって色素幹細胞が失われた状態になったら、もう二度と復活することはありません。
それなのにストレスが解消されることによって白かった毛髪に黒い色素が戻ってくるのは、白髪であっても色素幹細胞が生き残っていて、メラニン細胞を作る能力が一部であっても残っているからです。だから、白い毛髪は一部が黒くなる可能性はあっても、全部の毛髪を戻すことはできないのです。
もう一つの白髪が黒くなる理由としては、白髪になるのはストレスだけではないことがあげられます。白髪の原因は、年齢による老化、遺伝、紫外線などがあり、これらのことが色素幹細胞に影響を与えています。
また、栄養不足も原因となります。毛髪の90%以上はタンパク質のケラチンで、18種類のアミノ酸によって構成されています。そのアミノ酸が不足すると色素幹細胞の能力が低下することになります。
ミネラルのアルギン酸もケラチンの合成には必要です。毛髪のコラーゲンを増やすためにはビタミンのパントテン酸も必要となります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕