「薄毛の人は精力が強い」と昔から言われてきました。薄毛を気にする人への励ましの言葉だと言われることもあります。薄毛の人は実年齢よりも年齢が上に見られがちで、そのイメージの年齢に比べたら精力が強いというのが一般に言われていることです。
別の考え方もあって、精力が強いということは男性ホルモンが多くて、これが薄毛に関係しているということです。男性ホルモンは男性の場合は睾丸や副腎で作られています。
男性の場合は、ということは女性でも作られているということですが、女性の場合には男性ホルモンは卵巣と副腎で作られています。
男性ホルモンも女性ホルモンも材料となっているのはコレステロールで、エストラジオールという女性ホルモンは男性ホルモンから作られています。エストラジオールは卵胞ホルモンのエストロゲンの材料で、受精に欠かせない重要な女性ホルモンです。女性には男性ホルモンも重要だということがわかります。
男性の場合には男性ホルモンの大半はテストステロンで、筋肉を増やし、体毛を濃くする、制欲を高めるというプラス作用がある反面、マイナス面もあります。それは皮脂の分泌を増やすことだと指摘されます。
皮脂が増えると毛穴が詰まって、発毛が抑制されると考えられがちですが、AGA(男性型脱毛症)の研究が進む中で、他の理由があることがわかってきました。
男性ホルモンは5α−リダクターゼの作用によって活性型男性ホルモンに変化します。活性型男性ホルモンはTGF−βというヘアサイクルを早める物質を多く作らせます。そのためにヘアサイクルの成長期が短くなり、早く脱毛するようになります。
ヘアサイクルは成長期、退行期、休止期、脱毛・新生期を繰り返していますが、このうちの成長期は3〜5年となっています。その期間がシグナルTGF−βによって1年以下になってしまいます。それだけ脱毛が早くなり、成長が間に合わなくなって薄毛になっていくということです。
男性ホルモンによって薄毛になりやすいということと、男性ホルモンが精力を高めるということに直接的な関連はないとしても、結果として精力が強い人は薄毛になる確率が高いということはいえます。
薄毛と免疫の関係性ですが、男性ホルモンが薄毛に関係しているのと同じように、男性ホルモンが免疫に深く関係しています。その結論を組み合わせると、薄毛の人は免疫が低いということが言えます。
免疫は病原菌などの外敵と戦う機能だと一般に理解されているようですが、実際には「体にとって必要なものと不必要なものを判別して、不必要なものだけを攻撃する機能」を指しています。免疫力は、免疫の能力を指しています。
免疫の能力が高ければ、それだけウイルスや細菌に対抗することができるようになるわけですが、その働きを司っているのは免疫細胞です。免疫細胞には白血球とリンパ球があり、白血球には好中球、好酸球、マクロファージといった種類があります。
リンパ球はB細胞とT細胞があり、B細胞は外敵と戦う抗体を作り出し、T細胞は直接的に攻撃します。武器にたとえるならB細胞が作り出すのは砲弾で、T細胞はミサイルに相当します。
男性ホルモンが関係しているのはB細胞の働きで、男性ホルモンはB細胞が抗体を作る能力を低下させ、女性ホルモンはB細胞が抗体を作る能力を向上させます。外敵が体内に入ってくると先に小さな白血球の好中球などが働き、それで対応できないときには大きな白血球のマクロファージが働きます。
マクロファージは外敵と取り込んで処理していますが、どんな外敵を、どれくらい処理したかをサイトカインというサイン物質を放出してリンパ球に伝えます。そのサインを受けて、B細胞が抗体を作って対抗して、それでも処理しきれないときにはT細胞が登場します。
この一連の流れがあって免疫が保たれているわけですが、途中のB細胞による抗体による攻撃が、男性ホルモンによって抑えられると抗体の攻撃力の低下だけでなく、T細胞の攻撃力までが低下してしまうことになります。
もともと男性は、男性ホルモンによって女性よりも免疫が低いうえに、薄毛になるほど男性ホルモンが多いと、どうしても免疫が大きく低下することになってしまうのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕