「目に見えないものは信じない」という人がいます。霊魂や妖怪といった話ではなくて、普通に身体の中で起こっていることも、自分の目で確かめることができないものは信じない、信じたくないという感覚になるのは、わからないではありません。
しかし、身体の中で起こっていることの多くは目に見えないことで、中でも生命維持の仕組みであるエネルギー代謝と、その結果として起こっていることは絶対に見ることはできません。
電池と電球があって、その間を電線で結ぶと電灯が点くので、電気の流れを目で見て確かめることができたと感じるかもしれませんが、これは電灯が点くという反応があるからわかることです。
電気の存在そのものは見ることができなくても、電気のエネルギーは光や熱、運動(モーターを動かす)といったことを起こすことによって、目に見えないことを目に見える形にしてくれます。
電気のもとになるエネルギー源は水力、火力、動力などですが、人間の身体の場合にはエネルギー源は糖質、脂質、たんぱく質です。このエネルギー源を、身体を構成する細胞の中にあるミトコンドリアというエネルギー産生器官でエネルギーに作り変えています。
このエネルギー代謝が、一般に言われるような“燃焼の結果”なら、ひょっとしたら精密な顕微鏡で見ることができるのかもしれませんが、体内で脂肪が燃えてエネルギー化するようなことはないので、これを目で見ることはできません。
エネルギー源はミトコンドリアに取り込まれてから高エネルギー化合物のアセチルCoAに変化して、TCAサイクルというエンジンのような器官でエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)となります。このATPからリンが1個外れてADP(アデノシン二リン酸)になるときにエネルギーが発生します。
リン酸が1個、くっついたり離れたりするのがエネルギー代謝として起こっていることですが、TCAサイクルでは9種類の酸に次々と変化していて、その変化には水素イオンが移動しています。
これらの変化は、どんなに精密な顕微鏡でも見ることができないのですが、エネルギー代謝の証拠は私たちが生きているということです。目で見ることができないので、私たちの生命維持のためのエネルギー代謝が起こっていない、とは言えないわけです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕