「歩くだけでは筋肉はつかない」と言われることが多く、歩くだけでは筋肉強化につながらないと感じている人も少なくありません。中でも高齢者は、歩いている割には筋肉が増えない、むしろ筋肉が弱っていく(減っていく)ということもあります。
運動をした結果として筋肉が増えていくのは、筋肉が傷ついて、それを修復するためにタンパク質が集められていくからで、これによって筋繊維(筋肉を構成する細長い細胞)が太くなっていきます。
年齢を重ねると、この筋繊維が減っていくように思われることもあるのですが、そのようなことはありません。
筋繊維の数は誕生したときから変わることはなくて、筋肉が太くなっていくのは、それぞれの筋繊維が太くなっていくからです。逆に言うと、筋肉が細くなっていく、弱っていくのは筋繊維が細くなっていっているからです。
このことからわかるのは、高齢になっても筋肉を刺激する運動によって、筋肉の強さを保つことができるということです。そして、筋肉を強化するのに遅すぎることはないということです。
とはいっても、高齢者では筋肉の周りにタンパク質を集めてくる酵素(AMPキナーゼ)が減少しています。AMPキナーゼは有酸素運動をして一時的にエネルギーが不足した状態になると増えていく特性があります。
この特性を活かすようにするのが速歩(早歩き)です。
歩く速さが大切だという話をしてから、体育館の中などで実際に歩いてもらうと、ちょこちょこ歩きをして早く到着することを目指す人が少なからずいます。筋力が低下してくると早く歩くには歩幅を広げるよりも、狭い歩幅で足を動かす回数を増やすほうが楽になります。
しかし、それでは筋肉への刺激も弱く、AMPキナーゼも増えにくいので、筋肉の維持・増加によって歩く力を高めようとしたら、歩幅を広げて、できるだけ早く歩くことです。
これに加えて重要なことは、早歩きと速歩を交互に繰り返すことです。切り替えは時間でも(1分以上)距離でも(20mほど)よいのですが、早歩きと速歩を交互に繰り返すインターバルウォーキングによって、筋肉が強化されることは大学によって研究が続けられていて、NHKの「あしたが変わるトリセツショー」でも紹介されていました。
私の場合は、電信柱の間隔(30〜40m)を目安に切り替えたり、ポールを使ってグイグイと歩く速歩と負担をかけない普通歩行で切り替えをしています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕