カルシウムの摂取量が少ないと血液中のカルシウム濃度も低くなると想像されがちですが、想像とは逆にカルシウム濃度は高くなります。この現象はカルシウム・パラドックスと呼ばれています。
血液中のカルシウム濃度は比較的狭い範囲(8.5〜10.4mg/dl)に保たれていて、カルシウムの摂取量が少ない状態になってカルシウム濃度が低下すると、副甲状腺ホルモンが多く分泌されるようになります。
副甲状腺ホルモンには骨からカルシウムを溶け出させて、血液中のカルシウム濃度を保つ作用があります。不足した分だけ溶け出させるように分泌量が調整されていればよいものの、微妙な調整ができないことから副甲状腺ホルモンが多く分泌されて、不足しているよりも多くのカルシウムが溶け出してしまいます。
これがカルシウム・パラドックスの原因で、血液中のカルシウム濃度が高くなるということは骨から溶け出るカルシウムが多くなっているということで、骨密度が低下するようになります。この状態が長く続くと、骨がスカスカの状態になる骨粗鬆症のリスクが高まります。
血液中で濃くなったカルシウムが再び骨に蓄積されればよいのですが、濃くなったカルシウムは余分なものとして腎臓を通して尿に混じって排泄されます。カルシウムの継続的な不足状態は、骨にカルシウムが蓄積されにくくなるだけでなく、さらに骨のカルシウムが排泄され続けることになるのです。
血液中のカルシウムが過剰になると、尿路結石の可能性が高まります。尿路結石は、腎臓から尿道までの尿路に結石が生じる疾患です。結石のある部位によって腎臓結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石に分類されます。
結石の元の成分はカルシウムで、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、尿酸カルシウムといった結晶になります。
そのため、カルシウムの摂りすぎが尿路結石の原因と考えられがちですが、実際は逆で、カルシウムの摂取不足が原因になっているということです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕