納豆の有効性について研究とPRを納豆業界の依頼で実施したことがあります。その後に豆腐業界、豆乳業界からも依頼がありましたが、どれも大豆が材料で、同じような資料で、同じようなことを書けばよかったので、それほど困難な仕事ではなかったのですが、それぞれに特徴があり、納豆には納豆菌という優れた発酵菌があります。発酵させるだけでなく、商品としての納豆になってからも残って、これが腸内の発酵を進めることから善玉菌と同等の扱いがされています。
納豆菌が発酵によって作り出すものも重要で、その中でも注目されたのがポリアミンです。ポリアミンは大豆の中に含まれていますが、発酵によって納豆の中に多く含まれるようになります。ポリアミンが注目されたのは抗酸化性がある上に炎症を抑制する作用があって、寿命を延ばす作用があるとの研究発表が続いたからで、納豆を食べていれば寿命が延びるのでは、健康寿命が延ばせるのでは、と期待されたものです。納豆はPRが功を奏して売り場が広がり、食べる人も増えたのですが、誰もが食べるというものではないこともあって、ポリアミンを摂るなら何が何でも納豆ということにはなりませんでした。
ポリアミンと同様の働きとして今、注目されているのはスペルミジンです。これはチーズに多く含まれ、日本人がチーズを多く食べるようになるのと同じ曲線を描いて寿命が延びてきたこともあって、チーズ人気が高まっています。ここまで聞くとチーズを食べようという気になるかもしれませんが、日本人が多く食べてきたのはプロセスチーズです。プロセスチーズは発酵しているナチュラルチーズを加熱溶解させて成型したもので、乳酸菌は含まれていません。乳酸菌による発酵によってスペルミジンが発生するので熟成、中でも長期熟成させたチーズに多く含まれています。
スペルミジンの有効性は抗酸化、炎症抑制、寿命延伸と、どこかで聞いたような話です。ひょっとすると、と調べてみたら、スペルミジンはポリアミンの一種であることがわかりました。ポリアミンは体内に20種類以上ある有機化合物で、その代表的なものがスペルミジンです。中でもスペルミジンが多く含まれているのが納豆であったので、何のことはない、私たちはスペルミジンのことをポリアミンとして発表していたのです。
そのスペルミジンはナチュラルチーズだけでなく、ユーグレナ(ミドリムシ)にも含まれていることがわかり、ユーグレナ人気からスペルミジンが注目されてきました。もちろんユーグレナにも含まれているのですが、日常的な食品から摂るとなると納豆とナチュラルチーズとなります。チーズには塩分が多いこともあり、日常的に食べるなら納豆に軍配が上がります。納豆は粘り、味、臭いに苦手な人がいますが、これに大根おろしを加えると3つの弱点をカバーすることができます。これは納豆人気に火をつけたテレビ番組のメインテーマでした。