日々修行117 大動脈解離への対処

循環器疾患は命にかかわるだけに、予防と同時に、もしも発症してしまったときに、どれだけ早期に対応できるかが重要な分岐点になります。

東京にいたときのことですが、わずか3年の間に4人の知人が循環器疾患の中でも恐怖の対象とされる大動脈解離で救急搬送されました。ノルディックウォーキングの師匠、健康づくり団体の会長、サプリメント業界の営業マン、そして以前に世話になった大学の循環器の専門医です。

循環器の専門医は“医者の不養生”などとは言っていられない状況であり、循環器の専門医になったのは治療よりも予防が重要だと考えてのことだと聞いていただけに、誰にも起こり得ることだと感じたものです。

サプリメント業界の営業マンとは一緒の場にいたのですが、会議の途中で発症して、同席していた方が救急車の出動を要請しました。その電話をかけている人の横で「おそらく大動脈解離」と話したのですが、救急車に同乗したときに救急隊員から医療関係者かと聞かれました。

それは実体験を繰り返し聞いていたからで、もしも現場に遭遇することになったら的確に対応しないといけないとの思いから、循環器の専門医に取材をして、記事原稿も書き、最後には手術も見学させてもらっていました。

大動脈は、心臓から送り出された血液が最初に通る最も太い血管で、その直径は500円玉ほどもあります。それだけ丈夫な血管ではあるものの、大動脈瘤ができやすいところでもあります。大動脈瘤は大動脈が瘤(こぶ)のように膨らんだ状態で、大動脈の壁の弱いところにできると考えられています。

その原因としては、動脈硬化、高血圧、喫煙、ストレス、脂質異常症(高中性脂肪血症、高LDLコレステロール血症)、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、それに遺伝などが関係するとされています。

「死ぬほど痛かった」と経験を話す人がいます。それはある意味で幸運だった人で、大動脈解離は病院に救急搬送されても、たどり着くまでに半分がなくなっていると表現されるほど危険度が高い状態です。

大動脈瘤が破裂すると、血管壁の中に血液が流れ込み、血管が剥がれるようになる大動脈解離が起こります。これを予防するには大動脈瘤に気づくことと言われることもあるのですが、自覚症状はほとんどありません。

原因となる生活習慣を改めるしかないというのが、最善の対処法という困った状態であるところが、実に悩ましいところです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕