京都の言い回し4 遠方からの来客への対応

私は寺院の出身で、子どものときから何度も京都の本山に連れて行ってもらい、自分でも出かけていたこともあって、京都の人たちの“歓迎モード”には慣れていたつもりでした。

それが京都の周辺にも行くようになり、県民性(京都の場合は府民性?)が徐々にわかってくると、なんとなく違和感を感じることもありました。

京都で宿泊すると、古式ゆかしきとは言わないものの出迎えてくれる方々、接待してくれる方々の独特の雰囲気が京都人の特性だと感じていたこともあったのですが、それは違っていることを指摘してくれたのは京都の出版社の東京事務所の編集者でした。

ほとんどの編集部員は京都出身で、京都人らしい雰囲気がありました。東京に出てきた大阪人のように大阪丸出し(わざと大阪出身らしく話す)ということはないものの、京都にいるときよりも京都を意識した話し方をしているという雰囲気はありました。

これは京都に限ったことではないのですが、観光地では当地を訪れる方々のイメージに合わせて振る舞う(演じる)ところがあります。イメージを崩さないように、あえて県民性丸出しにして接してくるところがあります。

それは当地の旅館などで働く人が、地元出身ということもあるのですが、京都の宿泊施設では京都の人が迎えてくれていると思い込みがちです。それが違っていることを教えてくれたのは京都出身の編集者でした。

経営者や女将、支配人などは京都の人であっても、その下で働く人は実は奈良の人が多いということを聞きました。同じ言葉をかけられても、京都の人と奈良など周辺地域から働きに来ている人とでは意味合いが違っているということも教えてもらいました。

東京から、もっと遠いところから京都に来たことを知ったときに、「遠いところから来てはるんですね」と言われたとすると、京都に働きに来ている人の気持ちは「遠くから来てくれてありがとう」という意味合いだということです。

ところが、京都出身の方の中には「田舎者」という気持ちがあるということを聞かされました。本当に遠くから来てくれたことを感謝しているときも、田舎者扱いしているときも、言葉も一緒、態度も一緒ということで、それを受ける“田舎者”としては、どのように思われていても気にしないようにしようと思ったものです。

京都で宿泊して滞在する期間は、人生の中では、それほど長くはないのですから。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕