介護予防は一次予防と二次予防が一般には知られています。一次予防は、まだ介護が必要とは認められていない高齢者(65歳以上)に対して実施されるもので、介護を受けるようなことにならないように運動や栄養の指導が行われます。現在は認知症予防も重要事項となっていますが、運動をすることが認知症予防につながることが研究によって明らかになり、一次予防は運動が中心となり、これを補助するために栄養が語られるようになってきています。
運動の中でも有酸素運動のほうが有効性が高いとの発表があるものの、筋肉トレーニングの無酸素運動にも認知症の改善効果が知られるようになってきていることから、それぞれの運動の効果、両方を組み合わせた効果が期待されています。
二次予防は、すでに要介護の認定をされた高齢者が、これ以上は状態が進まないようにすることを主に実施されるもので、高齢者施設や介護施設で実施されています。運動といっても一次予防のような積極的なものではなく、どちらかといったら緩やかな状態のものが採用されています。
二次予防の内容については、これまで介護施設で実施されてきたことから、介護事業者で充分に対応ができます。自治体の支援を受けて新たな介護施設を設けることが増えていて、介護事業者が受託して運営する例が増えています。自治体から要望されるのは介護と二次予防だけでなく、要介護者以外の一次予防も合わせて実施が求められることが多くなっています。これに対して、運動が中心となるということで二の足を踏んだり、一次予防の部分は外部と連携して実施することも増えています。
外部連携の多くはスポーツジムやフィットネスクラブです。高齢化・少子化が進む中、スポーツジムなどは集客が大変になってきているところも多く、介護予防の一次予防への進出を狙っているところが増えてきています。しかし、運動は得意であっても介護には詳しくないところがまだまだ多く、運動と栄養との組み合わせによる予防となるとお手上げというところも見受けます。
日本メディカルダイエット支援機構の理事長が支援している運動施設には、介護事業者から運動と栄養の組み合わせによる一次予防の実施支援の要望が寄せられています。スポーツジムからの要望は、まだですが、これは私たちが介護予防としての一次予防に取り組んでいることが、まだ広くは知られていないことがあります。
当機構の理事長は、健康と運動を事業とする公益財団法人の理事を務めていたことがあり、運動と介護予防の事業に取り組むことを法人のトップに話したとき、スポーツジムの介護事業参加への協力を要請されました。当機構が運動と栄養の組み合わせによる効果的な運動指導を行っていることを知ってのことです。協力のための新組織を立ち上げることが検討されましたが、スポーツジムの方々に介護の実態、高齢者の特徴、日本人の体質の問題点などを踏まえて運動指導をすることが現状では難しいことがあげられています。
その現状からすると、介護事業者の方々に一次予防の運動と、栄養との組み合わせによる指導法を教育して充実を図ることのほうが早く、確実性もあるのではないかとの議論が始まっています。介護事業者が運動の効果、運動と栄養の組み合わせによる効果を理解した上で、運動事業者との連携を進めていくという考えです。“早く”ということが議論の重要事項となっているのは、高齢化が待った無しの状況で進んでいるからで、高齢化率30%の大台は、あと2〜3年後に迫っています。
すでに要介護となった方々のための二次予防による平均寿命の延伸も大切ですが、まだ介護が必要でない人を要介護にしないように、要介護になる人を減らすために一次予防に取り組んで健康寿命を延ばすことが多くの高齢者を抱える自治体の命題、緊急課題となっているのです。