京都の言い回し6 勉強しているは褒め言葉?

専門的な話を対面でしているときに、「よく勉強されていますね」と言われたら、これは通常では褒め言葉ととらえられます。こちらから「よく勉強されていますね」と言ったとしたら、それを貶す(けなす)ような意味で取られることは、よほどの変わり者でもない限りはないはずです。

そう考えるのは、私が京都の出身ではないからです。

京都出身の方々との仕事はPHP研究所の書籍の編集者にしても、島津製作所やオムロンにしても、ずっと続けてきました。島津製作所の子会社の広告代理店も、オムロンの子会社であったプリントシール機などの会社も、「勉強されている」というフレーズは使わないように注意をしていると話していました。

それは京都の特有の表現が、全国的にも、かなり知られてきているから、とのことです。

京都では「よう勉強してはりますな」というのは、知識が豊富なことを指しているのではなくて、「余計なこと言うな!」という意味で使われます。これは京都での“慣用句”というよりも、京都人の特有な表現法です。

これと似たようなことでは、「よう知ってはるな」というフレーズがあり、これも知識が豊富なことを褒めているわけではありません。端的に表現するなら、話し過ぎであること伝える気持ちが含まれていて、中には「黙れ!」の意味で使っている人もいます。

京都では、取材や打ち合わせだけでなく、講演やセミナーで訪れたこともあります。観光のときには、相手の反応を気にすることはないのですが、仕事で訪れて、対面で話すときには、どうしても話し過ぎになることもあります。

それは京都人を相手にしているときだけの注意点ではなくて、余計なことは言わないようにする、むしろ話す内容を抑えるように用意するのは当然の注意です。そんな気持ちで、抑えているつもりでも、無口な人、静かに聞くことを美徳としている人には、それでも口数が多く受け取られることがあります。

よく知っている、よく勉強していると言われないように、まだまだ気をつけなければならないことはあるようです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕