健康づくりは楽しいことばかりではありません。むしろ楽しいものではないという人もいます。楽しみながら食べてやせられることもあれば、楽しみながら運動をすることもあるでしょうが、食事も運動も正しいとされることを、ずっと続けるのは大変なことです。それでも続けられるのは目的があるからで、一つにはモチベーションがあげられます。
モチベーションは行動を起こすときの原因、つまり動機のことですが、内なる動きによって続ける意欲が湧き上がり、それが途切れないことで、目的を達成するまでやり続けることができます。楽しいことや励まし、名誉などがあげられますが、それよりも利益だという人も少なくありません。
利益というとインセンティブが言われます。インセンティブの元々の意味は目的を達成するための刺激のことですが、今では働いた結果の報奨金のほうがしっくりとくるほど、利益を指すようになってきています。
健康づくりのインセンティブというと、健康になった、健康になるための取り組みに参加した、ということに対して金券や商品券が与えられることがあります。スマートウエルネスコミュニティ協議会は企業と自治体との連携で、「健幸ポイント」を掲げて、一定の行為にポイントを提供して、テスト段階では1年間に最高24,000ポイント(1ポイント=1円)分の金券が提供されるという活動で、3年間でポイントとして自治体が使った分と同等の経済効果をあげています。この場合の経済効果というのは、医療費の軽減です。
医療費は保険がない場合には全額負担となります。条件によって3割負担なり1割負担を本人がしているわけですが、医療機関で支払った分以外は国や自治体が負担をしています。保険を受けるために支払っている保険料は、これに使われているわけで、不足している分は他の税金が使われることになります。自治体は全体の1割分の保険料を負担するのが基本です。健幸ポイントに参加した人の医療費が24,000円ほど減ったということです。
健康づくりに参加して金券をもらうことはインセンティブとなり、さらに健康になったということで個人としても医療費を使わずに済んだので、これにインセンティブがプラスされていることになります。さらにインセンティブがプラスされるためには、金券の使い道が問題です。単なる金券なら何に使ってもよいことになります。例えば、甘いものを我慢して、お酒を我慢したという人が“自分へのご褒美”として我慢していたものを買うということがあります。中には頑張ってもらった金券を孫に何かを買ってあげるために使うということもあります。そのインセンティブがモチベーションになって、健康づくりが続き、健康寿命を延ばして医療費が抑えられるなら、これは意味があることになります。
本来なら金券はベネフィットであると考えています。ベネフィットは幸福につながる利益を指す言葉で、金券が健康づくりに役立つことに使われるのが理想と考えますが、それよりも子供のため、孫のため、妻のため、恋人のためということでモチベーションが高まって継続できる人がいることは事実です。その人によって選べるようにすることを検討すべきだと考えているところです。