「王道」というと、最も正しいとされる方法という意味で使われることが多く、それも周囲に認められていることを意味すると考えられています。これを他の言葉で表現すると「定番」ということになりそうですが、これを「ワンパターン」と言われると反発もあるかと思います。
このような回りくどい書き方をしたのは、王道の使い方が間違って広まっていると感じているからで、王道の方法が通じない人がいることを示したかったからです。
王道は王様の道という意味です。一般の人が曲がりくねった道を苦労しながら、時間をかけて歩いていくしかなかったところが、王様が道を作らせたことから楽に早く到着できるようなったということで「安易な方法」を指すのが本来の姿でした。
これまで王道とされてきたことが、通じないだけでなく、本人に困難さを感じさせることになることもあり、これは発達に特性がある人の場合には特に気をつけなければならないことです。
最も正しいと思われ、実践されてきた方法(従来の考えの「王道」)が、実は特性がある人(中でも子ども)に通じにくい「ワンパターン」になっていることがあるのです。
発達特性がある子どもに、ワンパターンの方法でうまくいくことがないわけではないのですが、それは特定の条件が整った場合に限ってのことで、少しでも条件が異なると、まったく通じなくなることもあります。
子どもの特性は、ある程度のパターン分けはされているものの、それがすべてではありません。「普通の子ども」という表現は使いたくないので、ここでは発達障害ではない子どもを表す「定型発達」という言葉を使いますが、定型発達でも百人百様の特徴があり、その反応も違っています。
発達特性は、千差万別でも足りないくらいですが、それ以上の違いを表す言葉がないので千差万別を使わせてもらっています。その千差万別の特性の改善に成功すると、これをパターン化できないかとの考えが浮かんできます。
発達障害児の保護者は、大変な苦労をして育てていることは否定するようなものではありません。しかし、その保護者の成功体験が、そのままアドバイスとして伝えられていくことには抵抗感があります。
同じ方法、多少はアレンジを加えた方法が、他の子どもや家庭にも通じると考えるべきではないとの立場をとっています。それぞれの子どもの特性に特化したサポート方法を考えるべきです。
「間違った言葉も皆が使うと本当のことになる」というのは、誤用が一般に使われるようになる現代用語を説明するときに使われています。
それと同じことが発達特性の改善にもみられることで、正しい道筋を踏まえた上で、多少の違いがあっても目の前の子どもに合わせる、その時々によって変化する子どもにも合わせていくという姿勢が重要になると考えているのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕