西日本の夏は太平洋高気圧の上にチベット高気圧が重なった状態になったことで、地元地域の人たちが「こんなに暑いのは初めての体験」と言うくらいに暑い夏が続いた一方で、関東では8月の晴れない日が20日以上も続いたのは初めてという寒い夏になったり、台風が長く居座って記録的な大雨が続く、ゲリラ豪雨になったり、雹が降ってきたりと暮らすのにも大変でしたが、食べるものへの影響も大きなものがありました。
野菜は自然の中で栽培するものです。ハウス栽培もあるものの、これも天候が重要となります。日光を浴びる量が少なくなれば育ちが悪くなり、日差しが強ければ育ちがよくなるようなイメージもありますが、畑の中の温度と水分量に影響が出れば育成にも関わってきます。野菜が採れないので価格が高いということばかりにスポットが当てられがちですが、よい環境の中で充分に育つことによって栄養も豊富になっていきます。
日光を浴びる時間によって変化してくるのがビタミンの量です。ほうれん草の育ちが悪いことがテレビ番組で取り上げられていましたが、ほうれん草は、いつでも出回っています。そのために旬がわかりにくくなっています。最も栄養が豊富な時期は11月から2月なので、このことから冬を旬とするのが一般的です。ほうれん草は夏場にはビタミンの量が減ります。食品成分表(正式には日本食品標準成分表)によると、ほうれん草の可食部(食べられる部分)100gに対してビタミンCの量は旬には60mg、旬以外には30mgと記載されています。旬の半分にもなるビタミンCが日照不足によって、もっと少なくなるのは当然に想像がつくことです。
そもそもほうれん草のビタミンCは昭和22年の初版の食品成分表では150mgでした。それが改定のたびに100mg、65mgと低下しています。この65mgは年間の平均値です。今では旬のものが、かつての平均値を下回っているわけです。
日照不足で含有量が低下するのはビタミンだけでなく、ポリフェノールも低下します。ポリフェノールは紫外線に反応して増えていく色素で、トマト、ナス、ピーマン、トウガラシなどの色鮮やかな野菜は日照時間が短くなるほど減っていきます。このポリフェノールは活性酸素を消去する抗酸化成分であるので、これを食べることで私たちの身体が酸化されるのを防いでくれます。緑黄色野菜の魅力はポリフェノールなので、これが減ったのでは、せっかくの健康効果が期待できなくなります。
栄養素が低下している時期には、野菜をたくさん食べて減っている栄養素や成分を補うのがよいといっても、日照不足で育ちが悪いときには価格が高いので、食べる量を増やせとは言いにくい現状があります。となると、この時期だけは不足する栄養素と成分を補うサプリメントの使用も仕方なしという発言も出てくるでしょう。日照の問題だけでなく、そもそも野菜は栄養素が以前に比べて大きく減っているので、これを補うために日常的にサプリメントを摂ることも、当然のように考えなければならないことです。