酒を飲んだときの酔いの状態はアルコール濃度が関係していて、その濃度は「アルコール度数×飲酒量」が大きく影響しているということは以前に(日々修行155、165、171)に書きました。
これは酔いの度合いであって、その状態が、どれくらい続くのかが、実際の“酒の強さ”ということになります。
肝臓のアルコール分解能力が高ければ、酔いは早く引くことになります。アルコールから変化したアセトアルデヒドの分解能力が高ければ、悪酔いの状態を抑えることができることになります。
酔いへの対応はアルコール脱水素酵素(分解酵素)などの働きにも関わってきますが、それと同時に考えなければならないのは根本的な条件の違いです。
血液中のアルコール濃度は「アルコール度数×飲酒量」だけで決まるものではなくて、アルコールを割る(薄める)水分量が大きな要素となっています。血液中の水分が多ければ、同じ量のアルコールが血液中に入ってきても薄められることになり、酔いの程度は下がっていきます。
男性は女性に比べて一般に身体は大きくて、血液量も多いので、同じだけの飲酒量(アルコール摂取量)であれば、男性のほうが女性よりも酔いにくい、逆に女性のほうが男性よりも酔いやすいことになります。
身体が大きいほど、肝臓も大きくなり、アルコールの分解能力も高くなります。一般には肝臓の重さは体重の約50分の1で、男性で約1.5kg、女性で1.3kgとされています。この男女差は平均的な体重の違いということです。
肝臓は、さまざまな働きをしていて、よく言われるのは11種類の働きをしているとされているということです。それに関わる機能は、日本人でも、日本人よりも身体が比較的大きな欧米人でも大きくは違っていません。
大きな違いはアルコール分解能力も含めた解毒能力で、身体が大きいほど肝臓の解毒能力は上向きで高まっています。日本人は身体が小さく、しかも長い歴史の中で濃い(度数が高い)アルコール飲料を飲んでこなかったので、アルコール脱水素酵素が弱い傾向にあります。
また、年齢を重ねるほど肝機能は低下してくるので、以前と同じようには飲めなくなり、同じだけの量を飲めたとしても酔いが残りやすくなっていきます。
こういったことを配慮しないで、飲酒量と血液中のアルコール度数だけでアルコールと健康の関係を考えてしまう医師がいます。そのような医師と何度となく酒の席を経験してきましたが、飲酒は感覚を鈍くさせることから、自分の身体の状態や変化に気づかない方も少なくありません。
これは「医者の酒の不養生」そのもので、本人が思っているよりも身体の状態が悪化していることがわからないだけでなく、そのことを認めようとしない困った“不養生”の医師もいます。
その背景には、「酒を飲んでも健康であった」という自信があり、その自信の裏付けとなっている酒への対応力を否定することができないという心理状態もあります。
これは「日々修行」の中で何度か書いてきた「自業苦」(じごく)、自分がやってきたことが失われることを恐れて、その状態を続けないといれなくなる精神状態と同じことだと認識しています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕