医師から「酒を飲んではいけない」と言われて、日本酒ではなくて他のアルコール飲料を飲んでいたという勘違い(困った人)については「日々修行155」で書きました。その勘違いした人が、別の酒に関わる勘違いをしたという話から今回は始まります。
その方が山梨に仕事で行ったときに、酒の出る会合に出て、面喰らってしまったのは「酒飲まず」と言われたことです。これは甲州弁特有の表現で、西側の国中地域では語尾に「ず」が、東側の郡内地域では語尾に「ずら」がつくのが一般的ということです。
「ずら」は静岡の東部でも長野の諏訪地方でも使われているので、まだ馴染み(聞き覚え)があっても、語尾に「ず」がつくと否定形と思われがちです。
「酒飲まず」は酒を飲むなということではなくて、酒を飲め、飲んでくださいといった意味合いです。酒が目の前にあって、「酒飲まず」と言われても、決して意地悪や焦らして言っているわけではありません。
普通なら、そのことを思いつくはずなのに、日本酒を飲んではいけない(日本酒だけでなく全般的に禁止)と医師に言われたことを理解して間がないときだったので、困惑してしまったとのことです。
この逸話を聞いてから、お酒を飲んではいけない、飲むことを控えなければいけない人に対して、「酒飲まず」を導入部の話として使うようになりました。
前回(日々修行174)は「飲酒と糖尿病の関係」について書きましたが、飲酒は高血圧にも影響をしています。
酒(アルコール飲料)を飲むと、初めのうちは血圧が下がります。この事実をもって高血圧だから酒を飲んだほうがよいと言って(言い訳にして)、飲み過ぎてしまう人もいます。
ほろ酔い程度の飲酒量(日本酒換算で1合ほど)では、血管が緩むために血圧が下がります。通常の範囲の血圧の人は、大きくは影響しないこともあるのですが、血圧が高い人は血管が緩んだことによって血圧が下がってくれます。
ところが、2合ほどの飲酒量では、下がった血圧は元の状態に戻ります。ここで止めておけば飲酒が高血圧に影響することを抑えることができるのですが、これを超えると逆のことが起こります。
下がった血圧が元に戻るのは、血管が緩んで血圧が下がると血流が低下して、全身に血液をスムーズに送ることができないためです。そこで自律神経の交感神経が作用して、血圧を上昇させるほうに作用するからです。
そして、3合ほどを飲むと、交感神経の働き過ぎで血圧が正常範囲を超えて上昇することになります。
血圧が正常範囲の人では、急に上昇しても徐々に下がっていくのですが、高血圧の場合には下がりにくくて、血管のダメージが強くなります。
このことだけは飲酒をする人、中でも血圧が高めの人には知っておいてほしいと、講習会だけでなく、飲酒の最中の話題としても話すべき人には話しています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕