日々修行178 日本語が通じなくなったテレビ業界

1つの民放全国キー局の不祥事がテレビ局全体に影響を与えるになりました。不祥事があった局から優秀な制作スタッフが逃げ出すだけでなくて、その下請けをしていた会社も仕事が減ることになり、まるで不況業種のように、規模の縮小が続いています。

そんな中でも残っている人がいますが、だんだんと“言葉が通じない”スタッフの割合が増えてきています。以前であれば、“言葉が通じない”スタッフがいても、まだ修業中だから、これから日本語の本質を勉強させていくから、という話で済んでいたところがあります。

“言葉が通じない”といっても、日本語が通じない外国人といったような意味ではなくて、完全な勘違いをしているということを指しています。

日本語がよくわからないけれど一生懸命に学ぼうとしている人であれば、正しい意味を伝えればよいわけですが、根本的に間違っている人には、まるで“子どもを諭す”ように接することが求められます。

一般には、「誤用でも多くの人が使うようになれば、正しい言葉になっていく」ということで済ますことができたとしても、情報発信のテレビ局のスタッフが間違っていて、番組でも垂れ流してしまうことになると、これは見逃すことはできません。

大上段に被って正論を言うのは、ここでは相応しくないと感じていることから、簡単な例をあげて、読んだ人に感じ取ってもらえればと考えています。

その一つが「さわり」で、これはテレビ番組を見ていても、間違った使い方をされるシーンが、よくあります。

「さわりを紹介する」「ほんのさわりだけ」とMCやアナウンサーが言うので、短い時間で要点を説明してくれるのかと思って見ていたら、話題や書籍などの導入部を紹介して、それで終わりということがありました。

「さわり」は話の導入部ではなくて、話の要点を意味しています。さわりの部分は要約された内容で、初めの部分だけをチラ見させて、「続きは乞うご期待」というのは完全な間違いです。

そのようなことが起こるのは、MCやアナウンサーが間違ったということではなくて、彼ら、彼女らは台本どおりに話しているだけなので、台本を書いた人、それをチェックする人の責任です。

その責任を果たすことができないようなスタッフが残っているような放送局では、導入部、場合によっては目次だけを見せて、続きは本を買って読んでください、DVDやブルーレイの作品を買って見てくださいという、広告のような番組が増えていくことになります。

広告収入が減る一方のテレビ業界では、大きな番組提供やスポット広告ではなく、番組の一部を切り売りするようなことが横行しています。ある意味では「さわり」は広告営業の一環、間違った使い方は、今のテレビ業界の姿を示す言葉になっているのかもしれません。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕