日本人の平均寿命は1977年(昭和25年)に男性が77.69歳で世界第1位となり、1984年(昭和59年)には女性が80.18歳となって、男女ともに世界一の長寿国となったことから当時は誇らしげな報道がなされたものでした。
そのときから30年以上も長寿世界一を誇ってきたものの、2016年(平成28年)には男性は平均寿命を第3位に順位を下げました。しかし、女性が第1位であったことから男女平均では平均寿命第1位を保つことができました。ところが、2017年(平成29年)には男性が第4位となり、女性が第2位になったことから男女平均でも第2位となりました。第1位になったのは香港です。
日本人の平均寿命は今でも延び続け、平成29年では男性が初めて80.98歳、女性が87.14歳となっていますが、それでも世界一を保てなかった理由としては香港、シンガポール、スイスなどの平均寿命の延びが大きくなったことと、日本人の生活習慣病の患者が急激に増えていることがあげられています。生活習慣病を減らすための対策に積極的に取り組まなければ、再び世界一の座に返り咲くことはできないということです。
日本は平均寿命レースでトップの座を譲ったというものの、第二次世界大戦後の1947年(昭和22年)に男女ともに平準寿命が50歳を超えたときからの推移をみると、これほど短期間のうちに平均寿命を一気に延ばした国は他にはなく、日本人が驚くべき長寿体質の持ち主であったことは間違いがありません。長寿であることは喜ばしいことであるとしても、それが健康を保てないような状態での長生きであったのでは意味がありません。多くの人たちが望んでいるのは健康長寿であり、亡くなる最後の日まで元気で生活できるピンピンコロリが最も望ましいことには異論がないでしょう。
しかし、平均寿命が延びるにつれて生活習慣病患者は増え、がん、心疾患、脳血管疾患、肺炎による死亡数は平均寿命の伸びを上回る勢いで増え続ける一方となっています。平準寿命が延びるのは、それだけ長生きする人が増えた結果で、今では100歳以上人口は6万7800人を超え、高齢者人口は3461万人、総人口に占める割合は27.3%に達しています。これは男女平均であり、長生きの女性は30%を超えています。
日本老年学会と日本老年医学会は高齢者の年齢を65歳以上から75歳以上にするように提言していますが、現在の高齢者は身体的に若くなっているという状態であっても生活習慣病などによって若いときと同じように元気で生活できている人は年齢を重ねるにつれて減る傾向があります。日本人が生涯に使う医療費は約2600万円となっていて、そのうち半分は70歳以上に使われています。男性の平均寿命から考えると、わずか10年の間に過去70年分の医療費が使われていることになります。70歳に達したときに、医療にかからなければならないような状態を少しでも抑えることができれば、生涯医療費を大きく減らすことができるようになるわけです。
しかし、高齢者の現状を見ると、まだまだ問題が多いことがわかります。中でも注目されているのが健康寿命です。健康寿命は「日常的・継続的な医療・介護に依存しないで自分の心身で生命維持し、自立した生活ができる生存期間」のことを指していて、この考え方は2000年にWHO(世界保健機関)から示されました。これを受けて、我が国では「日常生活に制限のない期間」として、行きたいところに自由に出かけられる、好きなことができる期間を健康寿命としています。
2013年(平成25年)に発表された健康寿命と平均寿命の差は、男性が9.02年、女性が12.40年であり、女性が長生きになっている分、不健康な期間が長いといえます。人生の締めくくりともいえる10年前後が、このような状態であることは決して“幸せな長生き”と呼ぶことはできません。
健康寿命を過ぎて、寝たきりや家の近くしか出歩けないような状態となった期間は、特に名づけられてはいませんが、平均寿命と健康寿命の差を縮めて、“健康と呼べない期間”をできるだけ短くすることが多くの方々の願いとなっています。
健康寿命を延ばし、できるだけ医療費がかからないようにするための解決策として、私たちが考えているのは日本人の特徴的な体質を踏まえた健康づくりであり、その体質に大きく関わっている細胞のミトコンドリアでのエネルギー産生です。ミトコンドリアの中では生命維持に必要なエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が作り出されています。このATPが体熱を発生させ、筋肉や内臓、器官を動かし、神経伝達や免疫調整も行っているだけに、ATPの産生量を増やすことが健康で長生きするための必須条件となっています。
ところが、日本人はATPを作り出す能力が低く、そのために欧米人などに比べると血液温度も体温も低く、内臓の働きも低くなっています。その状態で長生きをしたのでは、年齢を重ねるほど体の不調が現れることになり、これが健康寿命を短くすることにもなります。
ミトコンドリアでATPを効果的に作り出すためには、三大ヒトケミカルのα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10が必要になります。三大ヒトケミカルは体内で合成されるものの20歳代をピークに合成量は減少を続けます。そのために補う必要があるわけですが、日本人は短い期間に寿命を延ばしたことから体内の変化は年齢の延びに追いついていないことがあり、三大ヒトケミカルの減少の度合いも大きくなっています。
三大ヒトケミカルは有効性が明らかであることから医薬品としても使われ、幸いなことに現在では食品として使用することが許可されています。そこで三大ヒトケミカルを用いることによってミトコンドリアでのATP産生を高め、日本人の体質の弱点を解決することが研究されています。