「よいことだけを聞きたい」と願って、悪い言葉が交わされるような世界に身を置かないようにしよう、悪い言葉が出てくるような会合には参加しない、もしも嫌なムードが漂ってきたら逃げるということをしていても、知らないうちに険悪な状態に引き込まれることもあります。
そういった“よからぬ”状態に引き込もうとする意図を持った人たちもいて、本人としては正しい選択をしているつもりでいても、悪い情報、間違った情報、誤った表現を流されてミスリードをさせて、理解を誤った方向に導かれることがあります。
こういった情報操作は、何も今に始まったことではなくて、日本の政治体制が作られた飛鳥時代から権謀術数の手段として偽(ニセ・エセ)情報を流すことが当たり前に行われてきました。
権謀(けんぼう)はその場に応じた策略、術数(じゅっすう)は謀(はかりごと)や企み(たくらみ)を表していて、要は「巧みに人を欺く策略」を指しています。
社会や組織などの集団にあって、物事を利己的な方向へ導いて、自分自身や所属手段の地位や評価を高めるために取られる手段でもあって、流されている情報を鵜呑みにするのではなく、常に疑いの姿勢をもって臨むことは、権力闘争に限ったことではありません。
自分の立場をよくするために、よい情報を流す(話を盛る)こともあれば、相手(敵)に不利な情報を長くことによって相手を貶(おとし)めることや、自分を優位にさせることも含まれています。
ゴシップ(重大ではない事柄にまつわる噂話)やスキャンダル(著しく名誉を傷つける事柄や噂話)であれば、言い過ぎではないか、間違っているのではないか、といった想像をすることは容易かも知れません。
ところが、この意図がある情報がネットメディア、マスコミ媒体(テレビや新聞、雑誌など)で流されていると、これを見抜くには、それなりの経験と大変な労力が必要になってきます。
ある県知事がパワハラ疑惑を受けて、不信任決議から再選挙での当選のあとのこと。PR会社の関係が公職選挙法違反でないかとの報道が相次いだとき、中でも批判を強めていたテレビ局が、2人の大学教授のコメント動画を流していましたが、その取り上げ方が問題視されました。
2人が話していたことは共に総論的なことで、具体的なことに対する発言ではないのに、実際にあったことに続けて動画を差し込むことで、あたかも具体的な発言をしているように視聴者が受け取れる、というか視聴者に受け取らせる意図をもって構成されていました。
このことは放送を見ていたときにも感じたのですが、これを確信したのはコメントを求められた教授の1人を以前から知っていて、確認することができたからです。
本人も放送を見ていて、扱い方にクレームを入れたとのことでしたが、それに対してテレビ局は何も対応してくれなかったと言っていました。ご本人は、二度と協力しないと言っていたものの、別の方に語ってもらえれば済むことです。
その教授には、「間違いであったことを番組で伝えたとしても、使い方に誤りがあったことを流すだけで、どこが、どのように違っていたかは出さないのが放送局のスタンス」ということを話させてもらいました。
せいぜいが「関係者に、ご迷惑をおかけしました」と言うだけで、これも誰に、どんな迷惑をかけたのか知ることができない表現でしかありません。
このような“情報操作”と“お詫び”は、事実がわからなければ何も意味がないことで、そのようなコメントが出されるような番組やチャンネル(放送局)は見ないようにするしかない、というのが、よいことを聞くための手段というのが悲しい現実です。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕