健康食品というと、テレビコマーシャルにしても健康雑誌にしても高齢者が登場する頻度が高いことから高齢者が使うものという印象があります。健康食品は医薬品ではなく、食品に分類されるので年齢制限はありません。健康食品の中には科学的根拠のエビデンスが得られている特定保健用食品(トクホ)、機能性表示食品、栄養機能食品は、試験を実施した対象者が限られていて、その対象者に有効であったというデータに従うなら、それ以外の人への有効性は明らかにされていないことになります。高齢者は機能が低下していることから効果が出やすくても、若い人には効果が出にくいということは普通に起こります。化粧品でも同じ傾向があります。
女性を対象にした健康食品の有効性を、男性が期待しても無理かもしれないというのは想像がつくところです。おしっこのキレがよくない人が期待を寄せているノコギリヤシは、男性の前立腺に問題がある人で有効性が得られたものなので、女性が使ってキレがよくなることはないわけです。子供の健康食品の使用も問題視されています。親の姿を見て、太りたくないからとダイエット系の健康食品を使う例もありますが、親が使わせている例が増えています。食事の栄養バランスに自信がないので、不足しがちな栄養素を補うサプリメントならわからないでもありませんが、頭がよくなるとか成長が早くなるといった機能性を求めての使用となると不安もあります。
何が不安なのかというと、一つには、その機能性の研究は子供を対象に行われたものではないということがあります。健康食品の試験は、もしも害が出たときに影響が大きくなる可能性が高い人では実施されません。子供だけでなく、妊娠可能な年齢の女性も、機能が低下している高齢者も対象ではありません。多くは健康な成人を対象にしての試験なので、成果が得られた健康食品であっても、試験対象者以外に同じような結果が出るのかについては、わからないというのが正解です。
短期間で効果があったとすると、長期間では、もっと効果がありそうな印象もあります。しかし、短期間の試験だけで効果があり、長く使っても、それ以上の効果はなかったというものも少なくありません。安全性についても、短期間では安全であったとしても、長期間に使うことの安全性は確認されていないということも多くなっています。健康食品特有の成分ではなく、食品に含まれている栄養素なら多くの量を摂っても大丈夫のようなイメージがあるかもしれませんが、ビタミン、ミネラルは摂取の上限値が定められています。通常の食品では、身体に影響が出るほど多くの量を食べられないということがあっても、成分が凝縮された健康食品・サプリメントでは満腹になるようなことはないので上限値を超えるような量を摂ることも可能です。
子供は有害とされる成分を分解・解毒する肝臓が小さく、発達もしていないので、成分の安全性と摂取量には注意が必要ということで、注意喚起もされています。成人になってからは、こういった注意喚起は見られなくなりますが、高齢になると肝機能が低下していきます。肝機能といえばウコンを摂ればよいということではなく、肝臓の解毒能力が低下していくので、子供と同じように注意しなければならないはずです。肝臓は体重の50分の1の重量があり、女性は男性よりも身体が小さいので肝臓も小さく、解毒能力も低いわけです。
さらに女性は年齢を重ねると肝臓が小さくなりやすいので、有害性への注意は、もっともっと必要になってきます。有効性だけでなく、安全性も年齢、性別などによって異なるということは知っておくべきです。