おかずは、どれくらいの数を食卓に乗せるのがよいのか、ということは以前から問われてきたことですが、結論を出すのは、そう簡単なことではないようです。
私たちがすすめている「100kcal栄養学」では、一食で食べる料理の数として主食が1つ(ご飯、パン、麺類など)、主菜が1つ(肉、魚、卵など)、副菜が2つ(小皿、小鉢の料理、サラダ、汁物など)を基本としています。
この指導をするときに、実際に食べている料理と食品の数を調査していますが、ご飯とおかずが1品だけ、丼ものだけで、汁物の代わりにお茶だけという例も少なくありません。
「小鉢」という言葉を使って、どれくらい食べているのかを聞いてみると、「小鉢ってなんですか」との問いが返ってくることもあります。
小さな食器に盛り付けた料理のことで、和食の付け合わせ、少ない量の煮物や和え物などであることを伝えても、まだピンとこない人もいます。
小鉢や小皿の料理がメインの料理(主菜)と同じ食材を使うことは少ないので、多くの種類の食品を食べてもらうための工夫だということを伝えるようにしています。
多くの食品を食べるのは、多くの種類の栄養素を満遍なく摂ってもらいたいということを意味しています。たった一つの食品だけで、1日に必要な栄養素を摂取することはできないことから、栄養バランスのためには、できるだけ多くの食品を食べることがすすめられます。
実際に、どれくらいの食品数が必要かというと、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」では17品目以上を食べていた人では栄養素の不足はなかったという報告がされています。
主食と一緒に食べる“おかず”は食品の数が多いことが求められていて、おかずの数を増やすことが健康の秘訣であるということを初めて伝えたのは江戸時代の儒学者の貝原益軒が記した『養生訓』だと言い伝えられています。
その中に書かれているのが“御加数”で、これは“おかず”と読まれています。おかずは、ただ食品の数を増やせばよいというわけではなくて、たんぱく源となる主菜では肉、魚、卵、乳製品、大豆製品が偏ることなく、できることなら全部が1日の食卓にのぼることが理想とされます。
野菜は、淡色野菜と緑黄色野菜があり、葉野菜と根菜もあるので、これらも偏りなく摂ることを考えるようにします。野菜類には食物繊維が豊富に含まれていますが、その多くは不溶性食物繊維で、腸壁を刺激して蠕動運動をよくする作用があります。
食物繊維には不溶性食物繊維もあり、水を吸って膨らむ働きがあって、糖質や脂肪の吸収を遅らせる働きがあります。また、便を柔らかくして便通をよくする作用もあるので、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方を摂ることがすすめられます。
他にも多くの食品を食べる意味はあるのですが、もう一つあげるとすると、それは食品に含まれるリスクを与えるような成分の量を減らすことです。少ない種類の食品を多く食べると、有害物質が含まれていたときには、それを多く取り込むことになります。
御加数には食の安全の確保という意味も含まれているのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕