ポールを使ったウォーキングの難点

ポールを使ったノルディックスタイルのウォーキングは、大きくノルディックウォーキングとポールウォーキングに分けられているということは以前から繰り返し述べていることですが、利点についても何度か紹介してきました。利点ばかりを述べていると、本当に利点(メリット)だけか、難点(デメリット)はないのか、という意見が出てくるのは世の常です。利点ばかりだと思って続けていたのに、それが難点を積み重ねていって、ついには身体に悪影響が出るというようなことがあってはいけないことです。こういった指摘は医薬品では多く、健康食品についてもよく言われることです。
実際にノルディックスタイルのウォーキングに難点はあるのか、ということですが、よくノルディックウォーキングの指導者が話をしているのは、ポールウォーキングはノルディックウォーキングのエビデンス(科学的根拠)を利用していて、ポールウォーキングの効果とは異なる、ということです。中でも例示されることが多いのは、「通常のウォーキングに比べて20%もエネルギーを多く使う」ということです。世界の論文を検索すると、その研究成果が出てきます。確かにアクティブなノルディックウォーキングの成果であって、ディフェンシブなポールウォーキングの成果ではありません。
効果が出にくいのに、出るものと思って一生懸命になって続けて、なかなか体脂肪も減らないし、筋肉もつかないというので途中で諦めたり、効果を出そうと思って頑張ることで、かえって無理がかかって怪我をする、ということもあります。しかし、これは効果的な話を難点にしたようなことで、実際に難点かというと、どうかとも思われます。
これは難点かもしれないという話を、私たちが頼りにしている運動科学の研究者からうかがったことがあります。その先生はオリンピックにも連続して出場された大学の名誉教授ですが、ブレーキの掛け方が重要という話をされていました。
歩くために左右のどちらかの足を前に出すとき、普通は前進するための蹴り出すことに意識がいきます。これは自動車で言えばアクセルを踏んで勢いをつけることです。むしろ意識をしたいのはブレーキのほうで、前に踏み出した足は踵から着地して足の裏を地面につけたときにはブレーキがかかります。ブレーキがかかった状態だから、この足裏を起点にして、逆の足をスムーズに前に出すことができます。ブレーキをかけるためにも筋力を使うわけで、歩くということはアクセルとブレーキの筋肉を切り替えて使い分けることです。
ところが、ポールを使うと、それができにくくなることがあります。ノルディックウォーキングは歩幅を広げて、勢いよく前進するので、大きく前に踏み出した足はブレーキもかかります。ところが、ポールウォーキングは通常の歩行の歩幅か少し広めの歩幅であることから、常にブレーキをかける歩き方をしていない人だとブレーキがかかりにくくなります。ポールの支えがあると、ブレーキを意識しなくても歩くことができるようになります。これは上半身を使って歩くことによって身体の負担が減るということではあるのですが、ブレーキをかけることを意識しないまま歩行を続けて、年齢を重ねていくと筋力の低下につれてブレーキをかける能力も低下していくことになります。
そのようなことにならないように、ポールを使うときにも歩幅を広げてブレーキを意識する、ポールを使わないときには、もっとブレーキを意識するという歩き方をしてほしいということです。