がんと闘うには糖質制限は有効か

ダイエットに関しては糖質制限について何度かメディアにコメントしてきましたが、週刊誌の記者から「がんと糖質制限について」というテーマでコメントを求められました。芸能人が公益のがん対策の団体の講演会で糖質制限を行っているという話をしたことから波紋が広がっていて、これを後追いする記事を考えているとのことでした。
がんに対抗するために糖質の一種の多糖類を摂るということは以前からありました。多糖類は免疫細胞の重要な栄養源なので、これを摂ることで免疫を高めて、がんに対抗しようというのは普通に考えつくことですが、糖質制限によってブドウ糖の摂取を控えたら、どんなことが起こるのかという疑問を抱いたようです。
がん細胞はブドウ糖をエネルギー源としています。だから、糖質制限によってブドウ糖を減らすか、場合によってはブドウ糖を断つようなことをすれば、がん細胞を“兵糧攻め”にすることができると考えている糖質制限をしているようです。また、ブドウ糖によって血糖値が上昇したときに膵臓から分泌されるインスリンは細胞分裂を促進するホルモンでもあるので、がん細胞の増殖を抑えるためにも糖質制限がよいと考えているようです。
がん細胞は毎日発生していますが、これを免疫細胞が抑えて、増殖しないように戦っているわけです。がん細胞を増やさないという発想はわかるのですが、それと同時に、むしろ、それ以上に免疫細胞の働きを活性化させることが重要になります。免疫細胞は、人間の他の細胞と同様にブドウ糖をエネルギー源として、活動のためのエネルギーを作り出して活動しています。それなのにブドウ糖を断つようなことをしたら免疫細胞の活動を抑えてしまうことになります。
身体が冷えると、がん細胞が増殖するとの考えから、代謝を高める健康食品がよいと考える人もいますが、代謝を高めて体熱を高めるためには燃焼しやすいエネルギー源のブドウ糖が必要です。ブドウ糖を摂らずに、代謝を高めるのは難しいことです。
がん細胞のことで、よく勘違いされることに酸素の摂取もあります。がん細胞は嫌気性の性質があるので、酸素を多く摂ることで、がん細胞の活動が抑えられるという発想をする人がいます。これは用語の理解の問題で、好気性というのは酸素がなければ働かないので酸素を摂ることによって活動が高まっていきます。これに対して嫌気性は酸素が嫌いということではなく、酸素があってもなくても活動ができるものを指しています。つまり、酸素を多く摂れば、がん細胞を抑えられるというわけではないのです。それなのに、がんと闘っている人の中には、酸素を多く取り込む酸素カプセルや酸素吸入を有効な代替療法として紹介している人もいます。
酸素を多く摂ることは大切です。というのは、細胞がエネルギーを作り出すときには酸素が必要であり、免疫細胞は酸素が充分でなければ活動も高まらないわけです。しかし、特別なことをして酸素を取り込むことはなく、有酸素運動のウォーキング程度でも充分との考えです。