抗酸化能力が高いほど健康効果が高いのか

活性酸素は細胞を酸化させ、細胞を遺伝子から傷つけていくことから、その活性酸素を消去することこそが健康の秘訣ということで、活性酸素を消去する抗酸化能力が高い食品を取ることがすすめられています。活性酸素は通常の酸素の電子のバランスが崩れたもので、欠けている電子が補われると正常な酸素になって、健康被害が起こらなくなります。電子を補う役目をするのが抗酸化ビタミンと呼ばれるビタミンA、ビタミンC、ビタミンEです。この他にも活性酸素を消去する方法があって、細胞よりも電子を奪いやすいものがあると、そちらから電子を奪っていきます。その奪われやすいものが抗酸化成分で、抗酸化成分が豊富に含まれたものを摂ることで細胞を酸化から守ることができるというわけです。
抗酸化成分として初めに広く知られるようになったのはポリフェノールで、赤ワインのポリフェノールが動脈硬化を予防するということで人気に火がつきました。動脈硬化に有効なのは、悪玉コレステロールとも呼ばれるLDLコレステロールが活性酸素によって酸化すると、白血球の一種のマクロファージが異物として取り込んで処理して、限界まで取り込むと活動を停止して血管壁の中に入り込みます。これが動脈硬化の始まりで、動脈硬化の最大の原因は活性酸素、最大の対策は抗酸化成分ということが知られるようになりました。
そういったこともあって、お酒を飲めない人が赤ワインを飲んで、かえって不調を起こしたという話まで伝わったことがあります。それはポリフェノールのせいではなくて、正しいことを伝えていないメディアのせいとも言われましたが、もう一つメディアのせいと言いたいことがあります。それは抗酸化成分の強さを示すORAC値(スコア)のことです。
ORAC値は活性酸素吸収能力といって、1992年にアメリカの農務省と国立老化研究所が開発した食品の抗酸化力の指標で、Oxygen Radical Absorbance Capacityの頭文字を取ったものです。さまざまな食品の抗酸化力を測定して、栄養データラボとしてランキングも示されました。ORAC値のランキングを示して、自分の会社の食品は活性酸素を消去する力が強い、活性酸素に負けないための健康食品だという宣伝合戦がされたものです。
実際に、どのようなランキングなのかを見たいと多くの人が思うところでしょうが、ORAC値のランキングを示すことは今ではできなくなっています。というのは、掲載が許可されなくなったということではなく、アメリカ農務省が2012年にORAC値を取り下げたからです。その理由ですが、ORAC値が人間の健康と関係がないことがわかったからです。
このことは事実ですが、抗酸化力が強いものほど、多く含まれるものほど活性酸素を多く消去するのも事実です。ただ、抗酸化成分は得意とする活性酸素があり、すべての活性酸素に対して、どの抗酸化成分も同じように効果があるというわけではありません。目によいと言われるベリー類に多いアントシアニンは目に優先的に届いて効果を発揮します。肝臓によいと言われるクルクミンは、やはり肝臓に効果を発揮して、それで余ったら他の部位に働きます。
こういったことを告げずに、未だにORAC値を示して有用性を示そうとする会社もあり、こういったことに惑わされないようにするには、やはり情報収集が重要になります。