和菓子より洋菓子が太りやすい理由

日本の伝統的な菓子は和菓子と呼ばれています。和菓子の上生菓子は餡を中心とした材料を用いて芸術性も盛り込んで作られた甘い菓子で、これを和菓子の頂点として干菓子から煎餅、おかき、あられなどの米菓まで、さまざまな種類があります。共通しているのは糖質で作られていることです。糖質にはブドウ糖が多く含まれます。ブドウ糖の名称については果物のブドウから初めて発見されたから名付けられたことを以前にも紹介しましたが、ブドウ糖を多く摂ると血糖値が上昇します。
血糖は血液中のブドウ糖のことで、その量が血糖値なので、ブドウ糖が血液中で多くなった状態を指しています。血糖値が上昇すると、それに反応して膵臓から血糖値を下げるホルモンのインスリンが分泌されます。どうして下がるのかというと、インスリンには細胞にブドウ糖を取り込ませる働きがあって、ブドウ糖が取り込まれた分だけ血液中のブドウ糖が減るからです。
インスリンの働きが、これだけならダイエットとは大きく関係がないのかもしれませんが、インスリンには、もう一つ重要な働きがあります。それは肝臓で脂肪酸を合成させる働きを高めることです。肝臓には余分に摂った糖質や脂質を材料にして脂肪を合成して、これを中性脂肪に変える働きがあります。合成された中性脂肪を脂肪細胞の中に溜め込む働きもあります。合成された脂肪を溜め込むだけならまだしも、そのときに脂肪を食事で多く摂っていると、これも脂肪細胞の中に取り込んでしまいます。つまり、血糖値を上昇させるブドウ糖が多く含まれている上に、脂肪も含まれているものを食べると、脂肪の取り込みが盛んになって“効率よく太る”ことができるのです。
同じ糖質の量であっても、ご飯は急激に血糖値が上昇することはありません。消化液が粒状のご飯に浸透して、分解するまでに時間がかかります。分解に時間がかかるほどブドウ糖の吸収が遅くなり、血糖値の上昇もゆるやかになります。ブドウ糖の吸収される量は同じであっても、吸収が早いほど血糖値は急上昇しにくくなります。ところが、粉になっていると分解に時間がかからず、早く吸収されるので血糖値が急上昇します。急上昇によって血糖値のピークが高くなると、それに応じて多くのインスリンが分泌されます。インスリンの分泌量はブドウ糖の多さだけではなく、上昇の度合いも関係していたのです。
砂糖はブドウ糖と果糖が1対1の割合で結びついた構造をしていて、すぐに分解されます。そして、ブドウ糖の割合が高いので一気に血糖値を上昇させます。糖と脂肪が多い洋菓子、中でもクリームたっぷりのケーキは、とてもおいしいもので、インスリンの分泌を高めて、脂肪細胞に脂肪を取り込むには格好のものです。
マラソン選手はグリコーゲンローディングといって、運動によって筋肉のブドウ糖を減らしてから、糖と脂肪が多く含まれているケーキを食べて一気に脂肪を蓄える方法に取り組んでいます。こうして溜め込んだ脂肪を使って最後まで走り切るエネルギーとしています。マラソンをするわけでもない人が、これと同じようにケーキを食べたら太るのは当たり前のことであり、特に取り込みやすいタイミングは夕方以降です。だから、ケーキを食べるなら、できるだけ早い時間帯にしたほうがよいことがわかります。