メディカルダイエットと体質研究の関わり

日本メディカルダイエット支援機構はNPO法人発足以前から日本人の体質の研究を続けています。その内容の一端は、理事が著者として『本当は健康寿命が短い日本人の体質』(宝島社刊)で発表されています。これを読んだメディア関係者から、「メディカルダイエットが言う日本人の体質というのは肥満遺伝子のことだと思っていた」という声がありました。そして、体質は日本人の健康、中でも高齢者の健康寿命と深く関わっているのかと言われて、“やっと気づいてくれたか”と感じたものでした。
長年付き合ってきたのに、メディカルダイエットが健康寿命延伸を目的としたものということが理解されず、いまだに通常のダイエットと勘違いしているメディア関係者もかなりいます。メディアで働く彼ら、彼女らにしたら、研究の主旨はともかく発信している情報の内容が大切ということもあるので、メディアの特性や発信対象者に合わせた情報を発信することに力を入れすぎたところがあります。そろそろ核心を伝える時期かという思いがあって、今回のコメントを書かせてもらいました。
メディカルダイエット研究のスタートは大学や病院の臨床栄養と運動生理学の研究者との交流からで、理論どおりの運動を実施して入れば、理論どおりの結果が出るはずとの思いがありました。その当時の理論が後々になって間違いであることがわかったということも少なからずありましたが、それを除いても理論どおりでないことが、長く続けるほど起こってきました。それはなぜなのか、同じように見えても実は身体の中に違いがあるということで、例外となるような結果の人を調べていたら、実はハーフ、クォーターなどで日本人の体質と異なる要素が加わっていることもありました。
しかし、それを除いても、あまり関係がないくらいに異なる結果が現れることもありました。先ほどの“肥満遺伝子”というのは日本人に特徴的な3種類の遺伝子のことで、これらが正常に働いていれば太りにくくなるはずなのに、その異常が起こっているために太りやすくなっていることを指しています。日本人に特に多いのはβ3アドレナリン受容体遺伝子の異常で、国民の30%ほどが該当しています。
運動をすると興奮ホルモンのアドレナリンが分泌されて、脂肪細胞にあるβ3アドレナリン受容体が反応して、脂肪細胞に蓄積された中性脂肪が脂肪酸に分解されて、血液中に放出されます。これが通常の流れとなっていますが、遺伝子異常があると受容体が充分に反応しないために中性脂肪が分解されず、“運動をしても、なかなかやせない”ということになります。
また、糖質が多くなると肝臓で脂肪合成されて脂肪細胞の中に蓄積されていきますが、それを促進するのもβ3アドレナリン受容体遺伝子に異常がある人に起こるという特徴があります。主には腹部から太っていく特徴があります。
国民の30%もが異常となると、これは異常というよりも体質のようなものといえます。他に下半身の脂肪から増えていく脱共役たんぱく質1遺伝子タイプ、筋肉が少ないことから太っていくβ2アドレナリン受容体遺伝子タイプがあります。このような遺伝子異常によって一般的な食事指導、運動指導が通用しない人が現れることも当然のことです。
遺伝子異常に合わせた食事指導、運動指導が行われるわけですが、遺伝子タイプがわかって、例えば、その人には有酸素運動のウォーキング、食事では糖質を減らすのがよいということがわかったとしても、それだけで誰もが同じ効果が得られるわけではありません。β3アドレナリン受容体遺伝子に異常がある人には糖質制限が効果的であっても、それ以外の人には効果が表れにくいということになります。
運動と食事はどちらが先か、どれくらいに量の運動がよいかというタイミングと実践量によって効果の現れ方が違ってきます。その組み合わせによって最も効果が出やすいようにするのがメディカルダイエットの手法です。
これについては、このサイトの「メディカルダイエット」を参照してください。