がんに対して女性が強い理由

「日本人の2人に1人はがんになり、3人に1人はがんで死亡する」と言われています。これに関連して、テレビのディレクターから、これまでにない質問がありました。一つは「これは男女平均で、男性と女性では違いがあるのではないか」というもので、もう一つは「がん患者の数とがんで亡くなる人の差は何が原因か」というものでした。
初めの質問への返答ですが、いくつかの考えがある中で私たちが注目しているのは高齢社会の影響です。高齢者の中でも長寿者は、それまで生活習慣病などの疾患に負けないで生き抜いてきた人です。心臓病や脳血管の病気などで亡くなることがなく生き延びてきた人は、最後にはがんで亡くなると言われます。
しかし、がんは発症してから亡くなるまでには長い期間がかかります。特に高齢者の場合には、がん細胞の増殖が遅くなります。がん細胞は成長ホルモンを使って増殖しているので、若いときには増殖しやすく、高齢になるほど増殖が遅くなります。そのため、他の病気で亡くなる人が増えていくわけです。
だから、2人に1人ががんになっても死亡するのは3人に1人くらいに確率が下がるということになるわけですが、もう一つの返答である男女差については指摘のとおりだと言えます。がん細胞は毎日発生して、それを免疫細胞が毎日処理しています。免疫細胞の働きが高ければ、がんの増殖は抑えられるようになります。女性は免疫が高いので、男性よりもがんになりにくく、がんで亡くなる確率も低くなっています。女性は、がんになるのは3人に1人の割合だと言われています。
その理由ですが、免疫細胞であるリンパ球のB細胞が作り出す抗体は、がん細胞などを攻撃する働きをしていますが、女性ホルモンによって作られやすくなり、男性ホルモンによって作られにくくなります。これだけでも女性は優位になります。免疫細胞の働きはストレスによって働きが弱くなります。男性はストレスに晒される機会が多いということもありますが、それよりも大きく影響しているのが脳の構造です。
男性と女性は脳の構造で違うところがあり、左脳と右脳を結ぶブリッジの脳梁の太さが違います。太いほど左脳と右脳をバランスよく使うことができてストレスを克服しやすいのですが、男性は女性の半分ほどの太さしかないので、男性のほうがストレスに弱く、女性はがんに対抗しやすいわけです。
この他に男性は筋肉量が多く、活動量も多いことから活性酸素の発生量が多く、活性酸素が細胞を傷つけると発がん物質が細胞に入り込みやすくなり、遺伝子を傷つけることから、男性はがんのリスクが高いということです。
健康セミナーで、この話をすると女性は明るい顔になり、男性は暗い顔になっていくのですが、「だから女性は男性をいたわってください」という話をしてカバーしています。明るい顔で楽しい思いをして不安を少しでも減らすことが免疫を高めることになるので、男性には実践してほしいものです。