強い抗酸化物質のカテキンは摂り方で逆効果

食べ物の健康効果を考えて食べるものを選ぶのは間違いではありません。できるだけ身体によいものを選んで食べようという姿勢は、身体によくないものを避けようという姿勢につながり、それも合わさって健康にプラスに働くことは当然に考えられることです。
みかんにはビタミンCの他にクリプトキサンチンという黄色い色素が豊富に含まれていて、この成分は抗酸化力が優れていることから寿命を延ばすということで注目されたことがありました。みかんを多く食べている産地の中で、どこが特に効果が高いのかという調査を行ったときのこと、静岡県でみかんを多く食べる人にがんが少なかったことから、静岡県のみかんは健康効果が高いのだ、という話が広まりました。さらに絞って調査したところ、静岡県の中でも特にがんが少なかったのは掛川でした。
掛川のみかんを食べている人の中で、がんにならなかった人が、どのくらいのみかんを食べているのかを調べようとしたところ、問題にぶち当たりました。がんになっていなかった人が多くとっていたのは「みかんではなく、お茶だ」と話す人が圧倒的に多かったからです。掛川はお茶の産地であり、がんも圧倒的に少なく、お茶によるリスク低減作用を第一に考えたほうが正しいと多くの人が感じていました。
緑茶にはカテキンという強い抗酸化力がある成分が含まれていて、お茶を多く飲めば抗酸化成分も多く摂れて、それでがんが予防できると考えられているわけですが、抗酸化成分には弱点があります。強い抗酸化成分には弱点どころか危険性もあります。それは“抗酸化成分なのに身体を酸化させる作用”です。全員に、ということではなく、お茶の飲み方によってという条件がついて回ります。
抗酸化成分は実は酸化しやすい成分です。身体の中に入って酸化することによって、身体の細胞の酸化を防ぐという働きがあります。わかりにくいことかもしれませんが、身体を酸化させる活性酸素は電子のバランスが崩れた酸素で、細胞から電子を奪って通常の酸素に戻っていきます。電子を奪われると細胞が傷つけられ、発がん物質が入り込みやすくなり、細胞の遺伝子を傷つけることで、がん化しやすくなると説明されています。
ところが、身体の中に活性酸素によって電子が奪われやすいものがあると、そこから先に電子を奪っていって、細胞の電子が奪われにくくなります。このことによって細胞の酸化が防がれて、がんの予防にもつながっていくわけです。抗酸化作用が強いというのは酸化されやすいということで、緑茶のカテキンは特に酸化されやすいということになります。身体の中で酸化するのではなく、身体の中に入る前に酸化したら、酸化物を摂ることになり、まるで活性酸素を摂っているようなことにもなります。
そのカテキンですが、お湯を注ぐまでは酸化されていないのに、お湯を注いだ瞬間から酸化が始まります。お茶をいれてから30分もすると完全に酸化しています。この状態で再びお湯を注いで飲むと体内の酸化が進むことになって、がんリスクを高めることにもなりかねません。では、どうすればよいのかというと、お湯を注いだら捨てて次に飲むものは新しい茶葉にすることです。そんなもったいないことはできないという人は、一度か二度注いだら、それ以降はポットにお茶を入れて、蓋を閉めて酸化しにくい状態で保存して飲むことです。これは静岡県の人たちが実践していることです。