あえてスローウォーキングのすすめ

スロージョギングは歩くペースで走るもので、走るよりも足腰など身体の負荷は少ないものの、歩くよりも心肺機能が高まり、脂肪燃焼が高まるという効果があります。歩くことに比べるとエネルギー代謝は1.6倍高まるという研究成果があります。以前に紹介したスロー筋トレは、ゆっくりと筋肉に負荷をかけて筋肉を増強させ、エネルギー代謝が高まります。スロー筋トレは何も器具などは使わずに自重だけで筋トレをしていくものですが、このスロー筋トレを歩くように前進しながら行うのがスロージョギングです。
早歩きが生活習慣病対策によい、健康寿命の延伸によいという研究成果が相次いでいる時代に、あえてゆっくりと歩こうと言っているのは何も高齢対策でもなく、介護予防の二次予防でもありません。あえて言うなら一次予防です。二次予防は介護状態にある高齢者が寝たきりにならないようにするもので、一次予防は自立できる高齢者が介護が必要な状態にならないようにするものです。今では〇次予防(ゼロ次予防)という考えもあって、これは若い人から64歳までの高齢者ではない人までの介護予防となります。
スローウォーキングは、それが目的というよりも、ウォーキングの前の準備運動、筋トレとして行うものです。ただ、ゆっくりと歩くではなく、腕を前に大きく振って水平の高さになるようにして、腕を振り上げると同時に、反対側の膝を大きく持ち上げます。膝を上げる時には反対側のかかとを浮かして、地面につけた足を伸ばす感じにします。これを立ったままで行うと自然に前に重心が移動していきます。その勢いを利用して、上げていた膝を伸ばして前に着地させます。
これと同時に着地したのと同じ側の腕を振り上げ、反対側の膝を持ち上げます。文字の説明だけではわかりにくく、コツもあるので詳しくはウォーキングの講習やイベントなどで見てもらうしかありませんが、20〜30歩も前進すると、これだけでうっすらと汗が出てくる人もいます。足の筋肉も思ったよりも使われ、筋肉に酸素が多く流れ込んでいきます。この状態で歩くと、筋肉細胞は多くの酸素を使って、多くのエネルギーを作り出すようになります。こういった効果もさることながら歩く姿勢を綺麗に保つ効果もあります。
私たちが示した通りに見様見真似でやると、一歩目か二歩目でふらつく人がほとんどです。前に進むよりも左右にブレて、前に行くべき運動エネルギーが横に流れて、前方への動きが小さくなってしまいます。しかし、何度か続けていると斜め上方向への伸びの力で姿勢が安定するようになり、左右の揺れが小さくなります。歩く前に、このスローウォーキングをしておくと、歩くときにも一歩一歩しっかりと地面を捉えて進むようになり、歩幅を広げて歩く、効率のよいウォーキングスタイルになっていきます。
歩くことは、左右に足を出せば進むことができるので、誰もが歩くことはできます。しかし、前方向への力を無駄なく使わないと、歩いた割には進まない、筋肉を使っていない、血流も思ったよりもよくない、脂肪が燃焼しにくい、エネルギーが効率よく作られずに元気が出ない、ということになりかねないので、歩く姿勢を作ってから歩き出すことをやってもらいたいものです。