おなかを外から温めるとやせるのか

腹部に温熱効果のあるシップを貼るだけでダイエットできる、ということをうたった商品があり、その効果についてメディア関係者から問い合わせがありました。実際の番組に使おうということではなく、おなかを温めると便通がよくなって、それが代謝を促進してダイエット効果があるという内容での企画会議をしているときに湧いてきた疑問ということで、いつものように簡単に答えてくれるAI辞書代わりに連絡をしてきたようです。当方としては本編のコメントをしたかったところですが、それについてはすでに伝えていたことで、それで企画会議に乗ったようなので、辞書代わりに返答をしました。
その商品というのは温シップのように単純に温めるものではなく、温熱効果のある刺激成分(カプサイシンなど)を配合したもので、皮膚に当てているだけで温まった感じがするものです。カプサイシンについては、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。
「おなかが温まるのは脂肪が燃焼している結果」だから「おなかを温めると脂肪が燃焼する」という理屈にしたいようです。脂肪が細胞内のミトコンドリアの中で燃焼するとエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が発生して、ATPからリン酸が1つ離れてADP(アデノシン二リン酸)になるときにエネルギーが放出されます。このエネルギーのうち半分ほどは体熱となるので、発生量が多いほど、つまり脂肪の燃焼が盛んになるほど、その細胞は温まってきて、これが体温を高めることになります。
おなかが冷えている人は、おなかが温まってくるのを感じて、特に腹部が温まりやすいように思うかもしれませんが、脂肪が燃焼するときには興奮ホルモンのアドレナリンが分泌されて、この刺激を受けて脂肪細胞の中の中性脂肪が分解されて脂肪酸が血液中に放出されます。この脂肪酸が筋肉などの細胞で燃焼します。全身で起こっている反応なので、特別におなかの脂肪だけが燃えるわけではありません。ただ、内臓脂肪が多く蓄積されている人は、それだけ多く燃焼するのは間違いありません。
では、おなかを外から温めると内臓脂肪が多く燃えるようになるかということですが、温めたところだけ燃焼が高まるなら部分やせも可能ということになります。しかし、この確認はされていません。また、あったとしてもメカニズムの説明ができていません。
腹部から刺激成分が浸透して、これによってアドレナリンが分泌されても腹部の脂肪だけが燃えるという仕組みにもなっていません。「燃えて温まる」と「温めると燃える」は違うということです。
ちなみに、今回の問い合わせをしてきたディレクターに以前に話をした便通のことですが、腸内細菌の善玉菌は腸内が温まることで増殖して、発酵も進み、便が軟らかくなり、便量が増えることから便通がよくなるということが起こります。これに関連して話したことですが、便通がよくなると、悪玉菌の活動を抑えて毒素(有害物質)が作られにくくなります。この毒素が細胞の代謝を低くすることになるので、おなかを温めることは毒素を減らして、代謝を高めることになり、それがダイエット効果につながってくるという説明をしていました。