ダイエットのエネルギーロスはよいことか悪いことか

エネルギーロスというと、せっかく作られたエネルギーが充分に使われないことを指していますが、栄養代謝について使うときにはニュアンスが違っています。もともとの意味では、例えば自動車のエンジンを動かすために入れたガソリンの燃焼効率が悪くて、下がってしまった実際の能力と計算上の能力との差がエネルギーロスとなります。また、エンジンの回転を活かすためのタイヤがすり減っていることから、思ったようなエネルギー伝達が得られないようなときにも使われます。これに対して栄養代謝での使われ方も本来はよくないイメージのはずの言葉が、食べすぎ、太りすぎの時代にはプラスの表現として使われています。
食事で摂ったエネルギー源の糖質、脂質、たんぱく質のうち余分となったものは肝臓で中性脂肪に合せされて脂肪細胞の中に貯蔵されます。この脂肪合成のときにエネルギーが必要になります。この使われたエネルギーがエネルギー源のエネルギー量から差し引かれて、これがエネルギーロスとなります。ロスが多いほど少ないエネルギーが貯蔵されることになるので、本来ならエネルギーロス率が低い食べ物を多く食べようと考えられるわけです。そのエネルギーロス率が低いものは脂質です。というのは、脂質は合成される中性脂肪と似たようなものなので、変化するのに、それほど多くのエネルギーが必要とならないからです。
脂質の摂りすぎは血液中の中性脂肪、悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールなどを増やして動脈硬化のリスクを高めることになるので、多くの量を摂ることはマイナスになると考えられています。太りすぎで内臓脂肪が増えることはメタボリックシンドロームになることが広く知られ、食べたもののうち体内に蓄積されるエネルギー量が少ないことはよいことだと考えられるような時代にはエネルギーロス率が低いものはよくない、むしろエネルギーロス率が高いもののほうがよいと考えられるようになっています。
そのエネルギーロス率の高いものが糖質とたんぱく質です。実際に、どれくらいの差があるのかということですが、脂質のエネルギーロス率は3%ほどです。これに対して糖質のロス率は20%、たんぱく質のロス率は23%ほどだとされています。しかし、糖質とたんぱく質は種類によって違いがあることから、大雑把に糖質とたんぱく質共に20〜23%と表現されることもあります。20%ほどのエネルギーロス率の差があるので、脂肪が多く含まれたものを食べると太りやすくなるのは当然のことです。同じ重量で比較しても、脂質は1g当たり約9kcal、糖質とたんぱく質は約4kcalなので、思ったよりも脂質の摂りすぎは太ることがわかります。
肝臓での脂肪合成はインスリンによって促進されます。インスリンは自律神経の副交感神経の働きによって高まるので、副交感神経の働きが盛んになる夕方以降の食事で脂肪を多く摂ると太りやすくなることがわかります。ということは、1日に同じだけの糖質、脂質、たんぱく質を摂ったとすると、夕食で脂質を減らし、朝食と昼食で脂質を増やしてバランスを取るのがダイエットには効果的ということです。