α‐リポ酸とコエンザイムQ10は同時に摂れるのか

代謝サプリメントに使われているα‐リポ酸は、天然型のR体と非天然型のS体を合わせています。非天然型というのは人工合成したものですが、S体は体内では使われないので、「半分は無駄になる」という認識が一般的です。その情報は日本メディカルダイエット支援機構でも発信してきましたが、そのことを覚えていても、その次の情報を忘れてしまった雑誌記者から「だったら2倍飲めばいいのか」という質問がありました。2倍を摂って、通常の量が吸収されるならよいのですが、そう簡単にはいきません。
R体のα‐リポ酸は胃液で分解されてしまい、分解されたものは体の中では役に立ちません。そこで分解されないようにS体と組み合わせることで“分解されにくく”しています。分解されないのではなく、あくまで分解されにくいということで、分解された部分が減ることになります。
S体なしで、R体だけが摂れれば効果的ということですが、分解されないようにして吸収させる方法があります。それは環状オリゴ糖(シクロデキストリン)と結びつける方法で、ブドウ糖8個が環状になった(輪でつながった)γ‐オリゴ糖の中にR体が入ると胃液から守られて、γ‐オリゴ糖が腸壁に接着して、R体のα‐リポ酸を、そのまま吸収させることができます。
一般的なα‐リポ酸は胃液で分解されやすいので、胃液が分泌されない空腹時に摂ることが原則となります。原則というよりも、空腹時に摂らないと意味がなくなります。それに対してγ‐オリゴ糖を活用したR体のα‐リポ酸なら、いつ摂っても吸収されます。
α‐リポ酸は以前は医薬品成分でしたが、2004年に食品として使うことが許可され、サプリメント成分として使用できるようになりました。それより以前に医薬品から食品としても許可されたのはコエンザイムQ10で、2001年からサプリメント成分として使われています。コエンザイムQ10は脂溶性の性質のため、脂肪に溶けてからでないと吸収されません。食事には少なからず脂肪が含まれています。白米だけでも脂肪が含まれています。だから、コエンザイムQ10は胃の中に脂肪がある食後でないと吸収されないわけです。
α‐リポ酸は空腹時(食前)に摂り、コエンザイムQ10は食後に摂るという使い分けが必要になります。それなのにα‐リポ酸とコエンザイムQ10が一緒に使われたサプリメントがあります。あります、というよりも一緒に使われたもののほうが目立っています。α‐リポ酸は糖質(ブドウ糖)をアセチルCoAに変化させる働きがあり、ミトコンドリアの中でアセチルCoAが細胞の取り込まれて燃焼されます。コエンザイムQ10はミトコンドリアに取り込まれたアセチルCoAを燃焼させる酵素を助ける補酵素となっているからです。酵素は補酵素の働きがあって初めて本来の働きをすることができます。
それもあってα‐リポ酸とコエンザイムQ10を一緒に摂れるようにしようという気持ちはわかるのですが、ただ組み合わせるだけでは、どちらかが吸収されないことになります。この問題を解決するのもγ‐オリゴ糖で、コエンザイムQ10と結びつくと効率よく腸壁から吸収させることができます。一般にはコエンザイムQ10の吸収率は1%ほどでしかありませんが、γ‐オリゴ糖と組み合わせると最大で18%になったとの研究成果もあります。
α‐リポ酸とコエンザイムQ10については、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。