もっと脂肪を摂って太れば長生きは本当か

朝の人気テレビ番組が「BMI22は痩せすぎ、24〜27が長生き」と紹介してから、BMIと脂肪摂取の是非についての質問が急に増えました。この数字に驚いた人もいましたが、それよりも「自分のBMIからみて24は健康的ではないと感じていて、その感覚が正しいのか、それとも感覚のほうが間違っているのか」という疑問を投げてきた人が案外と多かったことに、こちらが驚かされました。
BMI(Body Mass Index)は体格指数のことで、「体重を身長の二乗で割る」ことで求められます。この表現を難しく感じる人は多いのですが、要は体重を身長(m)で割って、さらに身長で割って計算できます。近くにいる人をモデルにすると体重が65kgで身長が170cmだと、「65÷1.7÷1.7」となり、BMIは22.49となります。
これまで最も健康的とされたBMI22を基準にして別の計算をすると「22×1.7×1.7」で63.58kgとなります。健康的に見える人は、だいたいそれくらいの身長と体重の関係なので、BMI22に、それほど違和感を抱かないまま来ました。それがBMI24となると69.36kgとなり、かなり多い感じがします。運動をしていて筋肉質の人なら、これだけ体重があっても腹が出ていないスタイルでしょうが、あまり運動をしていない人だと完全に腹が出ています。
筋肉は脂肪よりも同じ容量で20%ほど重いので、筋肉が多い人では体重が多くて健康面で問題はなくても、同じ体重でも脂肪が多い人だと少し問題も出てくるようなのがBMI24の体重です。
日本の基準では肥満はBMI25からなので、BMI24はギリギリ健康の範囲とみられてきました。ちなみに先ほどの計算式に当てはめるとBMIは72.25kgとなります。それがテレビ番組で紹介されていたBMI27になると78.03kgとなり、さすがにこれは「健康的な体重の範囲」とは言いにくい、というか言えない、言わない、となってしまいます。
それなのに、どうしてBMI24〜27が長生きとの発言があったのかというと、沖縄の脂肪摂取量と平均寿命の順位が証拠としてあげられていました。沖縄の平均寿命は長らく全国1位でしたが、平成2年から順位を下げ続けてきました。それが脂肪の摂取量の減り方と同じような曲線を描いていることが強調されていました。これは事実としても、どこの地域でも高齢化率が高まってくると脂肪の摂取量は減ってきます。若い世代は肉食が多く、高齢者は少ないということですが、沖縄県は高齢化率が高く、それが年々高まっているので当然の結果です。
脂肪の摂取量が多いといっても、それが平均寿命に現れてくるのは一番に肉食をしている世代が高齢者となるまでの30年ほどのタイムラグがあります。平成2年の30年前というと終戦から15年の昭和35年です。沖縄県は昭和47年にアメリカ統治から返還されましたが、それ以降も肉食の歴史が長く、脂肪の摂取量が多かったのが高齢化によって平均的なところまで減ってきたというのが正解といえます。
沖縄県は昔から肉食をしてきたといっても、歴史的に食べてきたのは豚肉です。戦後に多く食べるようになったのは牛肉です。動脈硬化のリスクを高める飽和脂肪酸は牛肉のほうが多く、そもそも日本人の体質に合ってないので、こういったことを考慮したデータでないと比較対象には使いにくいのではないかと質問者には伝えておきました。