岡山県の女性の平均寿命が延びた理由

前回の岡山県の女性の平均寿命が全国2位になった背景は何か、という話は近いうちに紹介したい、と載せていたのですが、「すぐにも紹介してほしい」という声がメディア関係者と自治体関係者から寄せられました。そういった情報は当方から受けるまでもなく、探せば簡単に見つかるレベルのことです。にも関わらず、当方に聞いてくるのは「サイト検索より楽だから」ということではなく、「切り口を期待しているから」という喜ばせて引き出そうという思いが感じられるような理由が告げられました。
その期待を裏切るような返答から始めました。
平均寿命が実際に長生きした人の状態を示すものなら、健康づくりの食事面と運動面の施策をあげていけばよいのでしょうが、平均寿命は、そういったものではありません。今年の平均寿命は今年生まれた赤ちゃんが今の生活環境と経済環境が続いたとして何歳まで生きられるかという推定の年齢です。そのために特徴的な食べ物や運動などを示しても意味がないと思うのですが、おそらくテレビ番組では、私たちが意味がないと思っているような表現をされるものと思っています。
そういって突き放したのでは面白くないので、何か番組の流れを変えられる情報を、と考えて岡山県の歩行数のデータを紹介しました。これは都道府県別の男性と女性の1日の平均歩数を比べて、最も男女差が大きな県を割り出しました。その結果、男女差が一番大きかったのが岡山県だったのです。男性の歩数は8136歩、女性の歩数は6042歩で、男女差は2094歩となっていました。
ウォーキングは最も簡単に導入できる健康のための運動です。歩数が多いほど健康度が高いとされますが、歩くことができる土地的な環境は、都道府県で大きな差はないはずです。気候的な環境は寒すぎる地域、暑すぎる地域は不利です。岡山県は“晴れの国”と呼ばれるほど年間の降水量1mm未満の日数(30年間の平均値)が日本一多くて276.8日です。でも、これで女性が歩いていない理由は、少しも説明がついていません。
「雨の日が少ない=晴れの日が多い」ではありません。日照時間の長さは県別ではなく県庁所在地別の統計(20年間の平均)ですが、それによると1位は山梨県甲府市(2213.9時間)で、岡山市(2028.6)は14位です。
生活習慣病のデータを見てみると、心臓病の年齢調整をした死亡率は岡山県の男性は3位、女性は4位となっています。トップ5を見てみると男性は福島県、高知県、岡山県、山形県、鳥取県、女性は福島県、鳥取県、高知県、岡山県、茨城県の順となっています。生活習慣病に関わる死亡率は経済状況に比例するところがあり、大都市部を抱える都道府県ほど状況はよくなっています。男女ともトップの福島県は気温や塩分摂取などから、この状況はわからなくはありません。しかし、岡山県は温暖であって塩分の摂取量は男性が30位、女性が40位と特に女性は少ない摂取量となっています。高血圧の割合は男女合同の統計ですが、下から数えて7番目ということです。
年齢調整をすると高齢者が多い地域は低くなり、若い人が多い地域は高くなる傾向があります。岡山県の高齢化率は28.1%ですが、2040年の高齢化率予測は34.8%です。岡山県内には、すでに40%に達した地域があるものの、それを含めても好成績です。そして、現状と予測との差の伸び率を見てみると6.7%と、日本で一番低くなっています。若い人が多く、交流が盛んな地域では高齢者を支える活動も盛んになります。これが岡山県の女性の平均寿命が全国2位になった大きな背景の一つであるということを伝えたところです。