栄養機能食品と栄養調整食品の違いは何か

機能性表示食品が登場してからというもの、特定保健用食品(トクホ)の販売は不振です。特定保健用食品は人間を対象としたヒト試験を実施して(動物試験ではなく)、健康機能を確認して、販売に当たっては有効性を証明しなければならないものです。その確認と証明に3億円はかかると言われています。それと比べると機能性表示食品は使われている素材の健康評価の論文があるだけでも申請することができるので、ハードルの高さが特定保健用食品とは大きく違っています。
しかし、販売に当たって述べられることは特定保健用食品と機能性表示食品では似たようなところがあるので、特定保健用食品を販売している会社が可哀想になるほど販売量が下がってきています。
特定保健用食品にしても機能性表示食品にしても、特定の機能に絞って研究が進められてきているので、それを摂っていれば全般的に健康機能が高まるというものではありません。食品は、それぞれ含まれている成分には特徴があり、一つの食品だけを食べていれば完全に栄養補給できるというものは存在していません。「卵は完全食」ということが言われたことがありますが、これはアミノ酸のバランスが取れていることを指していて、ビタミンやミネラルが充分に補えるわけはないのです。
ビタミンやミネラルなどの栄養素を補うものというと栄養機能食品があります。これはネーミングからすると栄養豊富という感じがするものの、実際には特定のビタミン、ミネラルが多ければ表示して販売できるものです。一つの栄養素が多く含まれるだけでもよいというものです。
そこで登場したのが、複数の食品を組み合わせた加工食品にすることによって、完全栄養を目指して作られた栄養調整食品です。この名称は、これまで名前をあげてきた各食品のように法律(食品表示法)によって定められたものではなく、いわば通称です。今では、さまざまなものが登場していますが、走りは大塚製薬のカロリーメイトです。菓子として販売されているのですが、グループの食品会社からではなく、本体の大塚製薬から販売されています。ここが重要なポイントです。
大塚製薬の本業はというと病院で使われている点滴の製造販売の最大手です。点滴の技術を用いて開発されたのがポカリスエットで、販売当時は“飲む点滴”と呼ばれていました。点滴とともに病院で大きなシェアを占めていたのが濃厚流動食です。食事ができない人でも、これさえ飲んでおけば栄養補給は大丈夫という栄養管理食の代表的なもので、これをミルク味にして販売されたのがドリンクタイプのカロリーメイトです。今ではブロックタイプのカロリーメイトしか見かけないので、今ではドリンクタイプのことを知らない人もいます。
どちらのタイプにしても濃厚流動食をベースにして、「これを食べれば栄養補給は完了」という内容となっています。糖質、脂質、たんぱく質の量とバランスが取れていて、11種類のビタミン、6種類のミネラル、食物繊維も摂ることができます。1ブロックが100kcalとなっています。
この開発アドバイスをした大学病院の管理栄養士で、大学教授も務めた先生は一時期、日本メディカルダイエット支援機構の理事をされていましたが、販売価格を決めるときに「g(グラム)単位ではなくkcal(キロカロリー)単位で2ブロック入りで200円」とアドバイスして、その通りに販売されました。
「これさえ食べれば……」というのは、寝たきりの人の流動食とは違うので、1日3食を、ずっと食べ続けてもよいという意味ではありません。食事をする時間が取れなくて、空腹を抑えるためにお菓子でもいいから食べるという人に食事の代わりとして食べてほしいと考えています。
1ブロックが100kcalで、2ブロック入りと4ブロック入りが販売されています。200kcalというと茶碗に軽く持ったご飯の量と同じです。肉か魚は1切れで、卵は1個で100kcalなので、このうちの2つを加えると200kcalのプラスとなって、400kcalに収まるエネルギー量となります。