入浴剤は泡が消えてから効果が高くなる

入浴剤についてのテレビ番組があった翌日に、他局のディレクターから連絡がありました。普通は疑問を感じたことの解決や新たな切り口はないかといったことに答えることになるのですが、今回は「見ていなかったのでポイントを教えてほしい」ということでした。“私たちはVTR代わりか”とも思いましたが、よい番組を作るための参考になるのなら、という気持ちで返答しておきました。
入浴剤からブクブクと出ている泡は炭酸ガスで、これを浴びることで身体の中に炭酸ガスが入ってくることによって、血管が拡張して、血流がよくなるので老廃物が流されて、疲労も回復する、というのが主旨で、なんだか入浴剤を販売している会社の主張と同じになっていますが、番組では入浴剤から泡が出ているときではなく、泡がなくなってからのほうが効果はある、というプチ驚き情報が伝えられていました。
これをスタジオで見ている芸能人から、ちょっとリアクションが大きいのではと思える反応があるという、いつものパターンでしたが、伝えられた内容は間違っていません。泡が出なくなったということは入浴剤から充分に炭酸ガスが出たということで、お湯の中に溶けている炭酸ガスの量も多くなっています。この炭酸ガスが皮膚から身体の中に浸透していって、炭酸ガスによる血管拡張効果が得られます。だから、入浴剤の泡を皮膚に当てるのではなくて、泡が出終わってから入るのがよい、できるだけ長く入っていたほうがよいという話です。
結局は当たり前の話を取り上げただけ、ということをディレクターに使えましたが、「ところで、なぜ炭酸ガスで血管が拡張するのかの理由は知っていますか」という問いかけをしました。このことがわかっていたほうが理解は深まるのではないか、という、いつものお節介です。これはメディア関係者から“小さな親切、大きなお世話”とも呼ばれていることです。
その小さな親切というか、大きなお世話の情報ですが、炭酸ガスは二酸化炭素です。炭酸ガス入りの飲料を飲んでも、胃腸から浸透する前に呼気と一緒に口から出てしまうので、飲料の炭酸ガスには血管拡張作用は期待できません。それに対して皮膚からは浸透して、そのまま血管まで入ってきます。なぜ、ということですが、二酸化炭素は体内の細胞で老廃物と一緒に発生するもので、これが血管の中に入ってきたときには早く排泄させなければなりません。そのために血管を拡張させて、血流を盛んにするので、二酸化炭素を入浴剤によって血液中に多くすることで血流促進させているわけです。
二酸化炭素というと排気ガスや老廃物、有害物質というイメージを持たれることもあるので、あえて炭酸ガスという言葉を使い続けているわけです。運動をすると血流がよくなるのは、筋肉が動いてポンプ作用で血流が促進されていることに加えて、運動によって細胞の代謝が高まって二酸化炭素が多く作られることから血管が拡張することもプラスされての効果だということです。ということで、運動の後の炭酸ガスを活用した入浴の効果についても話をさせてもらいました。