卵のコレステロールは気にしなくていいのか

前回の「卵は完全栄養食か」というテーマの話の中で、「“卵にはコレステロールが多いのでよくない”という意見には賛同することができない」と書かせてもらいましたが、“これはメディア関係者から問い合わせが来るな”と思っていたら、案の定の反応がありました。卵のコレステロールは血中コレステロールに影響しないということは常識になっていると思っていたのに、未だに「コレステロールが多い卵は動脈硬化の要因」と主張する人がいて、これは驚きと言うしかない状態です。
卵には確かにコレステロールは多く含まれています。それは事実で、血液中のコレステロールが多くなると動脈硬化のリスクが高まることも事実です。ということは、卵は動脈硬化を引き起こす要因と結論づけられてしまいそうですが、実際には、そうはなりません。
まずはコレステロールの吸収率ですが、腸からは半分も吸収されていません。口から入ったものは、すべてが吸収されるように考えてしまう人もいますが、そんな単純な仕組みにはなっていません。栄養素が効果的に吸収されない事実があるから、栄養摂取を高めることは大変なのです。
吸収率が半分以下だとしても、吸収されたコレステロールが血管にダメージを与えたのでは、量の多少を論じても仕方がないことになります。コレステロールが動脈硬化を引き起こすという話が広まったのは、旧ソ連の研究成果からでした。その研究は動物実験で、ウサギにコレステロールが多く含まれる卵を与えたところ動脈硬化が多く現れたということで、「卵=動脈硬化」ということが結論のごとく伝えられていきました。
ここで、よく考えたいのは、ウサギが卵を食べるのかということです。結論から言うとウサギは卵を食べていません。卵を食べていれば、卵のコレステロールの健康被害を抑える働きが身につくことはあるのですが、食べていないので“免疫”が備わっていません。この免疫というのは吸収されすぎないようにする能力のことですが、その能力が備わっていないためにコレステロールが吸収されすぎてしまうのです。
こういった身体の仕組みが解明されたことから、厚生労働省も医学界も卵のコレステロールが血中コレステロールに影響を与えないことが明らかにされました。では、卵のコレステロールは気にしなくてもよいのかということですが、コレステロールが動脈硬化と結びつくのはコレステロールの量ではなくて、コレステロールが酸化するかどうかに関わっています。コレステロールは細胞膜の材料で、ホルモンの原料となるなど健康を維持するために必要なものです。このコレステロールが活性酸素によって酸化すると、異常なコレステロールであると免疫細胞のマクロファージが認識して異物を内部に取り込む貪食を始めます。貪食が限界に達するとマクロファージは活動を停止して血管壁に蓄積されていきます。これによって血管が硬くなり、弾力性が徐々に失われていきます。これが動脈硬化の始まりです。
こういった仕組みがあるので、コレステロールが多く含まれる食品は、できれば減らすべきだということがわかります。