蒟蒻は砂おろし

蒟蒻(こんにゃく)は昔から砂おろしと言われます。古い文献には土砂下ろしと書かれていて、この場合の砂は体内の土砂、つまり腸内の不要なものを指しています。腸内には食事だけでなく、さまざまな口から入ってきたものが排泄されずにたまっていると考えられています。中には発がん物質のニトロソアミンのように普通に食べている魚と漬物に含まれている成分の反応によって発生するものもあります。また、腸内細菌の悪玉菌によって発生した有害物質もたまっていて、これが大腸の壁から吸収されて血液内に入ると全身を回って、健康被害を起こすことが指摘されています。
この有害物質は毒素とも呼ばれていますが、毒素は腸内で必ず発生するものであるので、できるだけ発生しないように、できるだけ吸収されないようにすることが重要になります。そのために注目されているのが食物繊維です。食物繊維は不溶性食物繊維と水溶性食物繊維に大きく分けられます。砂おろしの蒟蒻は水溶性食物繊維と長らく認識されてきました。“きました”ということは今では違う認識ということを言いたいからですが、書籍の中には今も水溶性食物繊維と書かれたものがあります。水溶性食物繊維が豊富に含まれている食品として「こんにゃく、きのこ、海藻、果物」と書かれているものを多く見かけます。
この食品の列記の中から、こんにゃくを除いている書籍も増えています。どちらが正しいのか、現状に合っているのかということですが、その答えとなる実験がありました。胃の中のことは別の試験で再現しやすくて、食品を歯で噛んだのと同じ状態でガラス容器に入れて、そこに胃液と同様の消化性がある液体を入れると変化が起こります。水溶性食物繊維は胃の中で水分を吸って、膨らんでいきます。そしてネバネバになったゲル状成分が食品の成分の一部を吸着します。吸着されたものは小腸から吸収されずに通過していくことになります。
蒟蒻は、どんな変化をしたのかというと、というより変化をしなかったのです。胃の中で消化されず、変化もしないで通過していくのは不溶性食物繊維です。蒟蒻芋を粉にしたものは水溶性食物繊維の性質があります。この粉を凝固剤を使って固めたのが板蒟蒻や糸蒟蒻です。この固まった状態では不溶性食物繊維になるということで、これを水溶性食物繊維として扱い、その効果を求めるのには無理があるということです。
不溶性食物繊維の蒟蒻は砂おろしにならないのかというと、不溶性食物繊維は腸壁を摩擦して、腸壁に付着した汚れを落としながら先へ先へと進んでいきます。それによって刺激を受けた腸壁は蠕動運動が進みやすくなり、便通がよくなっていきます。水溶性食物繊維によって不要なものを吸着するのも大切ですが、便通をよくして早く排泄させることは、もっと大切です。砂おろしのために蒟蒻を食べて、さらに水溶性食物繊維のきのこや海藻を食べて、両方の作用で腸内を綺麗にすることを心がけてほしいということです。