カレーは認知症を予防できるのか

健康を扱ったテレビのバラエティー番組で、カレーが認知症予防に効果があるということを取り上げてから、レトルトのカレーの販売数が増えたとか、以前からある正月のテレビコマーシャルのように「お節もいいけどカレーもね」を実践する家庭が増えたとか、再びカレー人気が高まっています。メディア関係者に聞いたところとでは、今回の番組はメーカーが仕掛けたのではなく局側の企画であったとのことですが、これを見ていて、まず気になったのは「何を今更」ということでした。
カレーと認知症の研究成果が発表されたのは今から18年も前のことです。その当時は健康ブームの真っ最中で他の健康の話題に埋没したところがあります。というのは、当時はカレーの有効成分とされたクルクミンはウコンの成分で、ウコンといえば肝機能向上一点張りでした。今のようにクルクミンがアスリートのパフォーマンス向上につながるということは考えようもない時代でした。ちなみにアスリートのパフォーマンスの研究は、日本メディカルダイエット支援機構の理事の研究機関での成果です。
18年前の発表は、65歳以上のインド人の認知症がアメリカ人の3分の1ほどであったことで、これはカレーを多く食べることが関係しているはずとのことで、カレーの摂取量で比較しても認知症の発生が3分の1ほどであったことから、カレーに含まれるクルクミンと認知症の研究が始まりました。インド人の認知症の発症率が低いことについては、「世界一認知症が少ない村がインドにある」という都市伝説のようなところから始まっているのですが、研究が進む中でクルクミンが血管脳関門を通過して脳に届くことが確認され、クルクミンにはアルツハイマー病の病変の一つであるアミロイドβタンパクを減らすことがわかってきました。
アミロイドβタンパクがアルツハイマー病を引き起こすのか、それともアルツハイマー病になったためにアミロイドβタンパクが増えるのかについては、まだ完全に決着がついていないことですが、どちらにしてもアミロイドβタンパクが減るのはよい傾向であるのは間違いありません。
カレーのクルクミンと言ってもピンと来ない人も少なく内容ですが、クルクミンは黄色い色素があるポリフェノールのターメリックです。「ターメリック=ウコン」だからウコンを摂ればよい、という考えがされた時期もありますが、ターメリックは秋ウコンのことです。日本にあるウコンは春ウコンです。秋ウコンにはクルクミンが3.6%含まれているのに対して、春ウコンは0.3%と12分の1の量です。秋ウコンの切り口はオレンジ色ですが、春ウコンは黄色です。それくらい色素成分に違いがあるということです。もう一種類の紫ウコンは黄色でもないのでクルクミンは含まれていません。
カレーのレトルトや固形のルウにはクルクミンは豊富に含まれているのかということですが、一般にはカレーには1皿で10mgのクルクミンが含まれているとされています。ウコン飲料は30mgの含有量ですが、10mgはインド料理の店で提供されているカレーの場合の話で、市販のカレーは含油量が少なくなっています。中には「少々」というカレー粉が1%以下のものもあります。クルクミンの量となると、その何分の1の量にもなります。市販のものを使う場合にはクルクミンを振りかけなければならない分量ということです。インドの家庭料理ではクルクミンを入れて味と香りなどを調整しているので、それを家庭で再現しようというか近づけようということです。