体内で合成される成分は不足しないのか

糖質を摂ると肝臓で脂肪が合成されるという話について、テレビ関係者から連絡がありました。今回は質問というよりも、つぶやきのようなもので「脂肪が作られるなら脂肪は摂らなくてもいいんですよね」という内容でした。体内で合成されるなら、わざわざ摂らなくてもよいという話は、三大ヒトケミカルのα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10のところで何度も触れてきました。三大ヒトケミカルは若いうちは合成量が多くても年齢を重ねると合成量が減ってきて、摂取の必要性が高まってきます。
脂肪はというと、年齢を重ねると合成量が逆に増えるのではないかと思えるほど、脂肪細胞の中に多くたまってくる感じですが、これは合成量が増えたからではなくて、代謝が低下してきて、エネルギーとして使われなかった分だけ脂肪がたまってきた結果です。この代謝というのがキーワードで、「代謝によって体内で合成されない脂肪だけは摂る必要がある」というのが答えです。
脂肪は、いくつかの分類方法があります。飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸という分類もありますが。ここで取り上げているのは必須脂肪酸と非必須脂肪酸という分類です。必須脂肪酸は体内で合成されないために食品から摂らなければならない脂肪酸です。非必須脂肪酸は体内で合成されることから、食品から摂らなくてもよい脂肪酸です。なぜ合成されるのかというと、体内に合成のための酵素があるからで、合成されないのは合成のための酵素がないからです。
非必須脂肪酸の合成は、水素のやり取りによって脂肪酸の組み換えが行われるので、特に何かの成分を摂らなければいけないということはないのですが、これがアミノ酸となると話が違ってきます。身体を構成するアミノ酸は20種類あり、そのうち9種類は体内で合成されないために食品から摂る必要がある必須アミノ酸となっています。それ以外の11種類は体内で合成されるので食品から摂らなくてもよい非必須アミノ酸です。
必須アミノ酸がバランスよく、しかも必要量に達しているのは肉、魚、卵、大豆で、これらは良質なたんぱく質と呼ばれています。これらの食品には非必須アミノ酸もバランスよく含まれているので、とりあえず食べておけばアミノ酸不足になることはないと考えられています。しかし、ここで問題となるのは非必須アミノ酸を体内で合成するために働く酵素を補う補因子の存在で、ビタミンB₆がないと酵素は働くことができません。ビタミンB₆はアミノ酸を異化するトランスアミナーゼ補因子となっています。
ビタミンB₆は肉、魚、牛乳、大豆に含まれているので、通常の食事では不足することはないのですが、たんぱく質が不足した食生活ではビタミンB₆も不足するので、非必須アミノ酸も不足するようになります。三大ヒトケミカルのα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10はアミノ酸を材料としているので、アミノ酸不足、つまりたんぱく質不足は代謝を低下させることになり、生命時のためのエネルギーが充分に作られないことにもつながるということです。