準必須アミノ酸って何だ

「必須アミノ酸は11種類ではないのですか」という質問が、科学情報紙の編集者からありました。体内で合成することができない必須アミノ酸は食品から摂る必要があり、体内で必要な20種類のアミノ酸のうち体内で合成されるアミノ酸(非必須アミノ酸)は11種類なので、これを引くと必須アミノ酸は9種類ということになっています。それに2種類プラスしてきた意味がわかっているので、さすがと言いたいところですが、その理由を聞かれたので、さすがとは言いにくくなりました。
必須アミノ酸はスレオニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、リシン、ヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファンの9種類です。
ヒスチジンは体内で合成されます。以前は乳幼児には必須アミノ酸とされてきましたが、今では成人でも必須であることがわかり、どの年代においても9種類となっています。これに対して、アルギニンは成人では非必須アミノ酸ですが、乳幼児では合成量が少ないために必須アミノ酸と非必須アミノ酸の中間的な立場の準必須アミノ酸とされています。
ここまで説明してきて、準アミノ酸という言葉は聞き慣れていなかったようで、繰り返し質問されました。
非必須アミノ酸のシステインとチロシンも合成量が少ない人がいることから、これも準必須アミノ酸とされます。というのは、この2種類のアミノ酸は必須アミノ酸から合成されていて、必須アミノ酸が不足していると合成量が足りなくなるという事実があるからです。システインはメチオニンから合成され、チロシンはフェニルアラニンから合成されます。
グルタミンはグルタミン酸から合成される非必須アミノ酸ですが、ストレスで不足しやすく、ストレス社会の現在では、これも準必須アミノ酸とされています。
こうなると必須アミノ酸と非必須アミノ酸の定義がわかりにくくなりますが、ここで非必須アミノ酸を列挙しておくとグリシン(セリン、スレオニンから合成)、アラニン(グルタミン酸、ピルビン酸から合成)、セリン(グリシン、グルタミンから合成)、チロシン(フェニルアラニンから合成)、システイン(シスチン、メチオニンから合成)、アスパラギン(アスパラギン酸から合成)、グルタミン(グルタミン酸から合成)、プロリン(グルタミン酸から合成)、アスパラギン酸(グルタミン酸から合成)、グルタミン酸です。
合成されるルートを見ると、グルタミン酸がスタート地点にあることがわかります。グルタミン酸は魚介類や昆布などの旨味がある食品に多く含まれています。これらの食品が不足していると、非必須アミノ酸であっても不足する可能性があることがわかります。
リシン(lysine)はリジンとも呼ばれていましたが、今では英語読みのリシンに統一されています。脂質代謝に必要なL‐カルニチンは必須アミノ酸のリシンとメチオニンから合成されています。リシンが不足するとL‐カルニチンが不足して、ミトコンドリアに脂肪酸が取り込まれにくくなり、ダイエットにはマイナスとなります。また、糖質代謝に必要なα‐リポ酸は必須アミノ酸のヒスチジンから合成されます。