基礎代謝を高めてやせるのは可能なのか

メディカルダイエットは体内の代謝の仕組みを活用した科学的ダイエット法です。代謝の重要性についての話をしているときに必ずといっていいほど出てくるのが基礎代謝です。基礎代謝は生命維持のために使われるエネルギー量ですが、正式にいうと基礎代謝量といい「12時間以上の絶食後に安静状態で1日に消費されるエネルギー量」を指します。
1日に使われる全エネルギー量のうち60〜70%が基礎代謝量となりますが、約10%は食事をした後に使われる食事誘発性体熱産生量であるので、残りの20〜30%は活動代謝量、つまり身体を動かすことによって使われるエネルギー量となっています。60〜70%も占めているので「基礎代謝を高めてダイエット」というサプリメントや運動器具が登場するのも、それを買ってダイエットしようという人がいるのもわからないではありません。
基礎代謝量は生きていくのに必要なエネルギー量であるので、下がるということがあっても、なかなか高まるものではありません。下がった基礎代謝量は普通の状態に戻るということはあっても、例えば肝臓の働きが急に高まって多くのエネルギー量を使うようになるということは普通に生活をしていたら、ほとんど起こることではありません。ある成分を摂って代謝が高まったとしたら、それは代謝が低下していたのが普通の状態に戻っただけ……ということが少なくないのです。
基礎代謝のエネルギー消費量が多いのは、筋肉、心臓、肝臓、腎臓といった活動が盛んなところで、中でも筋肉は基礎代謝量のうちの35〜38%は占めているので筋肉が増えれば基礎代謝量が高まると考えられがちです。
筋肉を増やしてエネルギー源の燃焼が多くなれば何でもいいのかというと、糖(ブドウ糖)が燃焼した場合には、ブドウ糖が肝臓で中性脂肪に合成される量が増えにくくなります。その意味ではダイエットにつながるとしても、これでは積極的に体脂肪を減らしたいという希望を充分にかなえるものではありません。ブドウ糖だけをエネルギー源として使っているのは白筋で、筋トレをすることによって太くなっていく筋肉です。
それに対してブドウ糖と脂肪酸をエネルギー源として使っているのは赤筋です。負荷が少ない繰り返しの運動によってついていく筋肉で、有酸素運動をすると脂肪を多く燃焼させる必要性が高まることから、赤筋が増えて、酸素を使って脂肪酸を燃焼させる能力が高まっていきます。歩くことによって効果的に脂肪酸を燃焼させたかったら、そのための筋肉は歩くことによってつけていくのが効率がよい方法ということになります。
筋肉が増えても、筋肉を動かしていないと脂肪酸は燃焼しないような印象がありますが、筋肉は寝ているときにも脂肪を分解して、燃焼させてエネルギーを作り出しています。正確にいうと脂肪酸を細胞のミトコンドリアの中で燃焼させることにとって、エネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が作られています。ATPにはリン酸が3個ついていますが、そのATPからリン酸が1個離れたADP(アデノシン二リン酸)になるときにエネルギーが発生します。寝ているだけの何もしていないような状態でも、基礎代謝分のエネルギーは使われています。1日に8時間寝ていると、全エネルギー量の60%の基礎代謝量のうち20%が使われている計算になります。他の活動代謝量、食事誘発性体熱産生量の分がなかったとしても全体の20%は寝ている分に使われ、そのエネルギーを使っているのは筋肉が最も多いので、このことが「筋肉を増やせば基礎代謝が高まる」ということになるわけです。