日本は水が豊かな国なのか

「バーチャルウォーターって、どんな飲み物ですか」という質問を受けたことがあります。バーチャルというと、その後にはリアリティーが続くのが昨今の流行ですが、バーチャルは仮想現実ということからするとバーチャルウォーターは仮想現実の水ということになり、飲んでいるつもりでも実際には飲めていない水ということになります。
なんだか、よくわからない話ですが、環境省の説明によると「輸入している食料を生産するために使われている水」を指しています。日本は国内での食料自給率はエネルギーベースで38%となっています。実際に食品を販売している店舗を見ても、62%が輸入品ということではないのですが、エネルギーベースというのがキーワードです。生産額ベースでは68%となっています。
日本で生まれた牛を育てるために使われている飼料が輸入されたものであると、この牛はエネルギーベースでは100%が輸入ということになります。育てるための飼料まで考えに入れるのはバーチャルウォーターについても同じことです。
海外から輸入している食品を国内で生産する場合にかかる水は、1kgのトウモロコシでは1800ℓの水が必要となります。そんなにも多くの水がいるのかと感心していてはいけないということで、このトウモロコシを飼料として育てられたオージービーフやアメリカンビーフは出荷までに2万kgのトウモロコシを食べています。1000kgが1t(トン)なので20tものトウモロコシが必要になります。そのトウモロコシを育てるために必要な水は3万6000klとなります。
海外から食料を輸入しているということは、その生産に必要な分の水を使わないで済んでいるので、水を輸入しているのと同じことだ、というのがバーチャルウォーターの考え方です。
今よりも食品の輸入比率を下げて、国内生産による自給率を高めようとすると、それだけ多くの水を使わなければならなくなります。日本は降水量も多く、一部の地域を除いては水資源に困らない国だと言われていますが、現在の食料自給率を100%にするとしたら、日本全体で消費されている水と同じだけの量が必要になると計算されています。こう考えると、日本は水が豊かな国であるというのは本当なのか、という疑問も湧いてきます。
それは無理だとすると、海外から輸入される食料を確保し続けることを考えようということになってきますが、それが可能かという話があります。現在は食料が自給できていても、将来的には不足することが懸念されている国が日本の近くにあって、その国の人口は世界人口の37%を占めています。中国の約14億人、インドの約13億人を合わせた27億人の食料は今でも不足しているのに、両国とも経済発展をしているため、さらに増え続けます。
その両国に日本が頼っている食料が回されることで、日本が今と同じように食料を確保できるのかというと、それは甘い考えだとされています。バーチャルウォーターは今よりも減っていくということですが、その分の食料を作るための水を確保しなければ「水も飲めない」という状況が“仮想現実”として迫っているということを質問者に話したら、唖然とした顔をされていました。